COLUMN #229 直線と曲線

Netflixで配信されている純愛リアリティショー『ラヴ上等』を見終えた後、恋愛そのものよりも、彼らが本心を直球で差し出す姿勢が印象に残った。ああいうふうに言葉にできたら、自分に正直に生きられたら、物事はもう少しクリアに見えて、行動もシンプルになるのかもしれない、と思った。
見終わったあと、主題歌がglobeだったことから、懐かしくなってそのまま聴いていた。この曲あったな、好きだったな、とか。初めてジャケ買いしたアルバムはこれだった、なんて、断片的な記憶をなぞるように。
その中で、一曲だけ、妙に込み上げてくるものがあった。懐かしい、というよりも、そのときの感情がそのまま戻ってくるような感覚。ずっと触れていなかったキャビネットの上を、そっとなぞるような。キャビネットからすれば、急に触れられて、少し驚いたかもしれない。
感情は、いつも直線的に立ち上がるわけではない。あのときのように、ふとした拍子に、時間を超えて立ち上がってくるものもある。心理学では、こうした体験を「音楽誘発自伝的記憶」と呼ぶらしい。
この体験が良いか悪いかではなく「自分はこう感じるんだ」と気づくこと、その時間自体に意味があるのだと思う。私は瞬間的に言葉にするのが得意ではないからこそ、少し立ち止まり、探るように感じる時間が必要なのかもしれない。
日々に流されて、感じたことを脇に置いたままにしておくと、感情は砂のように、触れたそばからこぼれていく。今回は、たまたま音楽が、その砂をすくい上げる装置になった。
出来事は思い出せないのに、感触だけが残っている。理由も説明もないけれど、確かにそこにあったもの。何気なく過ぎていく一日の中にも、こうした、よくわからないリマインドのような瞬間がある。だからこそ、何気ない時間にも、意味が宿るのだと思う。
ちなみに、その込み上げてきた曲は「Perfume of Love」。込み上げた体験を思い出したくて何度も繰り返し聴いてみたけれど、結局、何ひとつ思い出せなかった。数日経った今でも、込み上げた感情だけが残ったままだ。
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