COLUMN #249 私がはじめて「私」と出会った日

Topic: ColumnWritten by yuka takahashi
2026/9/10
249

私が「本当の私」と出会ったのは、生まれてから25年がたった時だ。

10代の頃の私は、妄想ばかりしている子だった。

高校3年生の授業中、いつか身を置いてみたい場所を心に描いていたことを今でも覚えている。

ここではないどこかを思い浮かべながら「大人になったら、あんな人たちとこんな風に笑いながら生きていたいなぁ。とはいえこれはあくまでも妄想の世界だから、地球上にあるわけないか。だけど、出会ってみたいな。あるといいな」なんて考えていた。

それから約7年後、まさかのそんな世界と出会った。

それは、25歳にして初めて食の世界に飛び込んだ先に広がっていた。大きな声では言えないけれど、激務だった。どうやって家に帰り、どうやって次の日に職場まで歩いて行ったのか、記憶もなかった。日々、頭も体も酔っ払っているかのようにヘロヘロだったのだと思う。

でも、それでも、ただただ楽しかった。自分が自分としていられることが。ありのままの自分でいさせてくれる、同じ方向を向いた仲間がいることが。

「自分の好きな食の仕事を選んだから」というのも、理由のひとつかもしれない。けれど、もしこれが食の現場でなかったとしても、私は「私」に出会えていたような気もする。好きな仕事だからといって無条件に楽しい日々を送れるわけではないことを考えると、一番の要因は、職種そのものよりも「あの人たち」と「あの環境」だったのだと思う。

みんなといると、なんの根拠もないけれど愛されている安心感があった。

でもそれ以上に、わたし自身が彼らのことやあの場所が大好きだった。

あぁ、こんなところにあったんだ。ここにいてくれたんだなぁ。みんなと過ごすうちに、心の中の自分がようやく力を抜いて腰をおろして休めた。柔らかくて、ゆったりとした座り心地のいいソファに座っているようだった。私は、「本当の私」と出会った。

「はじめまして、こんにちは。」

25歳の自分に言うのはおかしな話だが、私は心の中の自分にそう挨拶をした。

「はじめまして、こんにちは。」

息をするのが楽だった。楽って楽しいんだ、と思った。

私はこんな風に笑うんだ。初めて心から笑っている自分を知った。

当時流れていた江崎グリコのCMで、子供は1日平均400回ほど笑うのに大人は15回ほどしか笑わないといっているのを見たとき、私子供じゃん!って思って嬉しかった。それまでの私からしたら、1日にこんなにも笑うのは考えられないことだった。

「私」と出会う前の私は、これを言ったらどう思われるだろう?さっきの発言は相手に嫌な思いをさせてしまっていなかっただろうか?と人目を気にしまくり、11回でも何かで誰かと笑える瞬間があれば、今日は1回笑えたからいい日だった、なんて思っていた。だけど「私」として生きられるようになってからは、怖がらずに思っていることを言えたし、よく笑っていたし、よく働いた。

よく言われる「自分らしく生きた方がいいよ」という言葉は本当にその通りだと思う。だけど「らしさ」とか「ありのままの自分」ってなりたくてなれるものでもないし、そもそも自分らしさが何かわからなくて、苦しいこともよくわかる。どこに行けば、誰といれば本当の自分に出会えるかなんて、きっと誰にもわからないのだ。人の魅力って身につけるものではなく、安心できる場所に身を置いた時に、内側から溢れ出てくるものだと思うから。

25年間、周りの周波数に合わせようと必死にチューニングしながら生きていたあの頃の自分には「よく頑張ったね」と言いたい。その時の息のしにくさをよく知っているからこそ、あの時の私のようにまだ自分と出会えていない人が自分らしく生きられることを願っている。

この世界が、その人の内側から溢れ出た魅力でいっぱいのいいエネルギーの世界になっていけますように。

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