COLUMN #239 「ウフフ」を探して
Topic: Column / Written by mayuko hicotani /
2026/6/25

このところ、少し時間があるときは散歩をしてみている。
そうすると、車や電車での移動では目に映ることがないであろう、ほんの些細な街のかけらに目がいくものだ。
穴の空いたフェンスをロープで修理した跡、ハート型にひしゃげた配管、無理やり書き換えられた看板、文字みたいな形をして地面に落ちた糸。
その場面だけを切り取れば、それはただの景色で、壊れたもので、とるにたらないものたちかもしれない。けれど、そこに至るまでに誰かに起きたことを想像すると、少しの温度を感じる。
そして何だか「ウフフ」としてしまう。
今は便利なツールが増えて、遠くのことまで簡単に知れるようになった。
だけれども、私はこの些細でありながら確かにそこにある、穴の空いたフェンスを結び直した誰かのことを想像してみたい。
誰が直したのだろう。
なぜそこに落ちていたのだろう。
どんな会話のあとだったのだろう。
そうして、見知らぬ誰かの物語を思うと不思議と街があたたかく見えてくる。
MIDORI.soでコーヒーを淹れるひととき。
ご飯やおやつを分け合う時間。
あくびが伝染する瞬間。
ここにもまた、そんな「ウフフ」の種が転がっている。
人と人が同じ場所にいて、何気ない時間が重なっていく。
世の中に溢れる「ウフフ」に目が留まるうちは、ぬくもりに手を伸ばそうとするうちは、世界は、人間は、まだ捨てたもんじゃないと思わされる。
だから今日も少し遠回りをして街を見つめてみる。
どこかにまだ見つけていない「ウフフ」が落ちているかもしれないから。
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