COLUMN #227 黒崎さんのこと

お金至上主義の金融の仕事から、もっとビジネスとデザインが融合したようなことがしたいと漠然と考えていた頃、ネットでスクーリング・パッドを見つけた。IDÉEは知っていたけれど、黒崎さんのことは全く知らないまま説明会に参加するために、会場である廃校をリノベした池尻のIID 世田谷ものづくり学校(現HOME/WORK VILLAGE)に行ってみると、大きなおじさんがいた。なんだかとても熱く話してくるので、よく分からなかったけれど、えいや!と18万円の大枚をスクーリング・パッドにつぎ込んだ。
目から鱗だった。黒崎さんがよく言う「面白さ」を体感したのだと思う。黒崎さんが連れてきた友人との対話が、社会人3年目の私にとっては「こんな生き方があるんだ」「こんなチャレンジができちゃうんだ」「こんな破天荒もありよね」と、とにかく面白かった。あっという間の3ヶ月を経てスクパは終わったのだけれど、実はここからがスタートだった。
*「面白いについて」
引用:WORK MILL 人間は本来、面白いということを中心に、遊ぶように働き、働きながら遊ぶものです。面白いは、「ファニー」や「インタレスト」と直訳されるかもしれませんが、面白いという言葉の本来の意味は、面の前が白むこと。つまり、何かを理解したり、課題解決したりした瞬間に目の前が急に明るくなることを、面白いと表現していたわけです。だから、仕事においても面白いが中心になり得るんですね。
「何が問題かが問題だ」。答えばかりを求めて、いかに効率的に適切に解を導けるかが重要とされているこの世の中で、黒崎さんはそれに中指を立ててきた。正解がある世界なんてちっぽけで面白くないんだ、と言っているようだった。(今ではAIが発展して、問いの方が重要なんて言われ始めているけれど——遅いよ!)黒崎さんの元にフラフラっと集まってきたのは、そんな「通常の」世の中についていけない、あるいはついていきたくない、ついていく必要もない人たちだったと思う。彼らもまた面白かった。黒崎さんを通じて、私もいい仲間にたくさん出会うことができた。
スクパのあとすぐに黒崎さんから「ちょっと作戦会議するから来なよ」って電話がきて行ってみたら、多様な言語が飛び交いながら、答えがないことにしっかり向き合うシンクタンクを作ろうと盛り上がっていた。よく分からないけどその考えに共感してちょくちょく仕事帰りに参加した。よく分からないけど面白かった。
2011年の東日本大震災の時、私が勤めていた会社が入っていたビルが倒れそうに揺れて、こんなところで死にたくない!と明確に思った数日後、黒崎さんから電話がきて「会社辞めちゃえば」って。私も「はい」と答え、黒崎さんの周りの仕事の手伝いをすることになった。
理想があるからそこに到達しないと怒られる。悔しい!って思ってやっていたことが懐かしい。趣味趣向が詰まった原宿のオフィス。
夏が始まる暑い日に「面白い物件あるから見にいこうよ」って、また電話がきた。それが後の「MIDORI.so Nakameguro」だ。あれからもう14年。
最後に電話が来たときは「頑張って上場しようね」って。「頑張りましょ」って答えてはみたけれど、えー、できないよ、黒崎さんもういないんだもん。上場って黒崎さんがIDÉEで本当はやりたかったことで、その思いを捨てきれなかったんだと思う。それと、上場することで「通常の」価値観に対してやっぱり中指を立てたかったんだと思う。ロックでパンクな人だった。
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