COLUMN #225 Between Here & Elsewhere

「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」
幼いころ、私が「何を考えているの?」と尋ねるたび、父はそう答えた。
父は研究者で、職業柄いつも何かを考えている人だった。しかし、当時の私はこの種の哲学的な問題にはあまり興味がなく、誰にもどこへも行ってほしくはなかった。
私は夜、MIDORI.so Nihonbashiで働いている。
人々が滞在し、仕事ができる場所だ。やがて去っていくゲストたちと会話する。その度に父の言葉を思い出す。
彼らと話している最中や後には、夢を見ているような感覚に襲われる。彼らは二度と同じ流れに触れることはできない川のように、私の傍らを流れ去っていく。もし彼らが夢に過ぎないのなら、私は存在すらしていないような気がしてくる。幽霊のように、自分が透明で、希薄になっていく感覚がする。
我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか。
私はこの問いに答えを求めているわけではない。だが、人々がなぜ生きるのかは知りたいとは思う。たとえ明確な理由がなくても、彼らと話すことで、彼らが人生に何を見出しているのかが覗き見える気がする。
我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか。
こうして父の発した言葉を反芻していると、どこかさみしい気持ちになる。
私に残された時間は未来にしかないというのに、いまだ私は過去という大地に取り残されて立ち尽くしている。気づけば、今の私は父と同じ問いの中に立っている。
でも、私が知りたかったのは答えではなかった。
答えではなく何か別のものを求めていたのだと思う。
—「どこへも行かないよ」—
もしかすると、これが父から聞きたかった言葉かもしれない。
たぶん私にとって、どこへ向かっているのか、何者か、どこから来たのかは、本当はどうだっていいのだろう。それに、そんなものの答えはきっとどこにもない。
彼らは漂い去るが私は留まる。
錨のように、ここと、どこか他の場所を繋いでいく。
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