COLUMN #221 ひとをみる、脳をみる

脳って、宇宙みたい。あるいは、森ともいえそう。
その広がりには終わりがなく、今この瞬間も変化を続けている。多くのエビデンスが積み重ねられてきた現在であっても、脳は未知を抱えた臓器だ。
私は脳に興味がある。脳には“そのひと”が詰まっているからだ。私たちは意識せずとも心臓を動かし、呼吸をし、命をつないでいる。その根幹を支えているのが脳だ。けれど、脳の役割は生命維持にとどまらない。
思考や感情、記憶、選択を通して、人格を形づくっている。脳には “そのひとらしさ” がたっぷりと詰まっているのだ。それは言葉にできないなにかや、いろいろなかたちで表にあらわれる。
これは私がコミュニティオーガナイザーをはじめる前に、看護師として病院に勤めていた頃の、現在にもつながる話だ。
看護師として働き始めて1〜2ヶ月ほど経った頃、私は脳に疾患を抱えたある患者さんと出逢った。
詳しいことは書けないけれど、そのひとの目を見ると、人柄やあたたかさのようなものを感じた。
言葉はなく、意思疎通はとても難しかった。それでも、微かな表情の変化や、ふと伝わってくる“そのひとらしさ”を汲み取りながら、少しずつ関係性を築いていった。
ちいさな関わりを重ね続ける中で、驚くほどの変化があった。ずっと苦悶の表情をする、意思疎通が困難だったそのひとが、やがて笑顔を見せるようになった。私を認識し、頷き、手を振ってくれた。意識レベルも、わずかながら改善した。脳が刺激を受け取り、応答しようとしているのだ。
私はいつも、できるだけポジティブな視点で“そのひと”を捉え、アセスメントすることを意識している。できたことがすべてではない。しようとしている、その過程そのものにも意味がある。
表にあらわれてくるのは、“そのひと”のほんの一部にすぎない。裏側には、無数の要素が絡まり合っているのだ。
だからこそ、見えるものだけでなく、見えないものも大切にしながら、さまざまな視点で“そのひと“を見つめたい。
ひととの関わりの中で、脳は揺れ、応答し、変化していく。
私は目の前の“そのひと”の中で広がりつづける宇宙に、向き合っている。
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