COLUMN #87 働くことと仕事をすること

Topic: ColumnWritten by akane dono
2023/4/28
働くことと仕事をすること

働くことと仕事をすること。どちらも同じような動作だが、私の中では印象が違う。「働く」はポジティブなイメージを持ち、「仕事をする」はネガティブなイメージであまりテンションが上がらない。

どう違うのか意味を辞書で調べてみると、「働く」は人が自発的に動き、主体的な行動を表す。一方で、「仕事をする」は、「仕えること」を意味し、自分以外の誰かから与えられたことを受動的に行う、という違いがあるらしい。

受動的に行うことは決してネガティブではない。与えられた範囲でのベストパフォーマンスを発揮することに対して「いい仕事ですね」という褒め言葉があるように。要は、仕事は与えられた要件の中で最適な成果を出すことが求められる。私のスタイルはどちらだろうか。やりたいことはやる、そうでない「仕事」にも「いい仕事」ができているとよいのだが

もうひとつ、全く違う言葉だが「クリエイティブ」と「デザイン」は同じように捉えられがちだ。私が、デザインという言葉が用いられる領域を学び始めて早10年。まだむず痒いが「デザイナー」を名乗るようになり、その肩書き相当の責任を感じはじめているが、「クリエイター」やその類の領域で仕事をするのはもう10年、いや、20年先になりそうだ。

似たようなふたつの言葉の違いはきっとその過程にあると思う。「クリエイティブ(広告用語では名詞として使われる方)」は、創造し、自由な発想から何か新しいものを生み出すことを表す。「デザイン(Design)」には、signが入っているように、記号や図面を用いて設計することを表す。つまり、デザインは、与えられた情報をもとに、設計し意匠を決めることが求められる。

デザインにおいても出てきた情報を鵜呑みにして反映するだけでは、ただの受け身の作業でしかない。与えられた情報をいろんな方面から分析し、その情報が正しいのか、本当は別の理由があるのでは?などと思考を巡らせながら情報のパズルを整理する。(もちろん意匠性も大事だが、私はこの思考のプロセスが見た目と同じくらい大事だと考えている。)

「働く」「仕事をする」「クリエイティブ」「デザイン」と4つの言葉は、何か関連しているようにみえる。働くことが主体的ならばそれはクリエイティブな行為に近く、「仕事」と「デザイン」は大まかなカテゴリーでは似ているような。。。デザインには情報の整理や設計に関する行為が含まれ、仕事は受身の作業に近いような。。。。

AIの登場により「仕事を奪われるのでは?」なんてネットニュースのタイトルを目にするが、全ての「仕事」が取られるわけではないと思う。「デザイン」のような考えるプロセスは人間にしかできない。そして考える葦である人間だからこそ面白いことができるのではないだろうか(と信じたい)。主体的に動く「働く」と、人間が整理した情報を設計する「デザイン」が今後の重要なキーワードになるはずだ。

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