COLUMN #6 SF短編集のススメ(S:F=すこし不思議)

藤子・F・不二雄先生といえばドラえもんやキテレツ大百科などアニメ化されている作品が有名ですが、個人的には真骨頂的最高な作品はSF短編集です。既に多くの方にとって好きな作品だと思うのですが、先日、何回目かわからない再読をしてみて改めて本当にすごく面白い作品だなあと思い、紹介文でも解説文でもない「ススメ」的文章を書いています。
全体的に所謂「ブラックユーモア」「風刺的」な面白さ満載で、よりポピュラーな藤子・F・不二雄先生の作品等につながる要素が見えてくる楽しさもあるのですが、私が思うこの作品の素晴らしさやすごさというのは単純に「ストーリーが面白い」とか「絵柄が好き」というそういうのは大前提として「え、まさに近年話題になってることじゃん」みたいなことを1970年代後半ー1980年代前半に既に発表されていること。フェミニズム的な思想や、幸せとはなんぞやとか、マーケティングな目線だとか、食料など資源問題とか、無意識に当たり前に感じてしまっている価値観とか、未来で流行るだろう想定の会話で着ている服が90年代に大ブームになるアムラー的ファッションだったりとか。
そして、作品のオチが「問題定義の先のことを考えさせてくれる」ように私は感じています。基本全て一話完結になっているので(シリーズ的に複数回出てくるキャラもおりますが)サクサク読める。中途半端に読める。完結したものしか読みたくない人にもおすすめ。星新一の「ショートショート」や「世にも奇妙な物語」あたりが好きな人にはもちろんのこと、F先生が繰り出す道具好きな方々には、[異色短編集]の「パラレル同窓会」から読み始めるの一推しします。自分の大好きな人たちに、このちょっと「背筋の凍る楽しい」を共有したくて機会があれば文庫の「ミノタウロスの皿」を幾度となくプレゼントし続け、結果、人生で一番買った漫画であり、今後これ以上買う作品はないように思います。
藤子・F・不二雄先生がご存命だったらこの2021年にどんな作品を残されたのでしょうか。F先生の作品の中で未来にいる「今」からの更に未来、これからの「働く」をテーマにした作品があったら...と、そんな妄想にふけたりするだけでも私は豊かな時間を過ごせているのです。
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