COLUMN #46 勝手な使命感

Topic: ColumnWritten by Sakiko Masuda
2022/6/23
#46

「人の役に立ちたいなんて、実はけっこう欲が深い。誰かのためにが立ちすぎると、まわりも自分も楽しくなくなる。使命があるからやっているのではなく、やっているうちに使命はできる。いつの時代も世界を変えていくのは、勝手に愛せる人なのだと思います。」

尾形真理子さんが編集長を務めていた頃の雑誌「広告」が好きだ。とりわけ2016年に発行された「勝手な使命感」という特集号が大好きだ。そこには自分の好きなことがいつの間にか仕事になって、会社になって、気が付いたら社会になくてはならない存在にまでなっていた人たち、そこまでいかなくとも、好きなことが多少なりとも仕事につながっている人たちを取材している。

縄文時代が好きすぎて、縄文時代について話せる友達が欲しくてZINEを作った人。海外の映画が日本でほとんど上映されていなかった時代に、映画の素晴らしさを少しでもたくさんの人と分かち合いたくて映画字幕翻訳者になった人。段ボールで財布を作ってみたら楽しくて作り続けていたらそれがブランドにまでなった人。工事現場の案内を少しでもわかりやすくできないかとガムテープで案内文字を作っていたら、それがフォントにまでなった人などなど、愛すべき変人が勢揃いしている特集号なのである。

ここで取材されているほとんどの人たちは、最初はそれを求めている人がいない。でも自分の中にある「勝手な使命感(私命感)」を信じてやり続けていたら必要としてくれる人がいて、いつの間にか社会からも必要とされる存在になっていたのだ。

「世の中にある問題を解決したい」「それがなくて困っている人のために仕事がしたい」という志で仕事をしている人も当たり前に素晴らしいけど、世の中それを見つけられる人ばかりじゃない。でも、好きなことは誰でもひとつは持っているんじゃないだろうか。「誰かのために」がスタートではなく、自分の好きなことを没頭してやり続けていたらそれが誰かのためになっていた、という人たちがいることは、希望でもあると思う。

MIDORI.soにも(社会性はありながらも)何かが好きでひたすらにその穴を掘り続けているような、いい意味で偏った人たちが集まっている。私自身も平均的を求めない、偏った人にどうしても魅力を感じてしまう。だからモグラのように、いろんな人の間を右往左往しながらその穴をつないでいくのが私たちコミュニティオーガナイザーの仕事なのではないかと、勝手な使命感を持って今日も仕事をしている。

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