COLUMN #192 宝塚歌劇団で過ごした10年、そして今思うこと

舞台は、いつだって華やかだった。
現実ではありえない設定、キラキラした衣装、大きな拍手、憧れのまなざし。でもその裏側には、厳しい練習や妥協を許さない指導。正直なところ、心を削られる瞬間が何度もあった。
それでも10年間、舞台に立ち続けることができたのは、宝塚が好きだったから。こんな私を待ってくれるお客様がいたから。そして、同じ道を歩む仲間がいたから。
「宝塚を卒業したら、何をするの?」よく聞かれる。
舞台に立つ人もいれば、芸能の世界に進む人もいる。バレエや歌の先生になる人もいれば、就職活動をして一般企業で働く人もいる。選ぶ道は人それぞれ。
私が今の仕事を選んだ理由は、コミュニティオーガナイザーになって次は自分が誰かの「頑張るきっかけ」になりたいと思ったからだ。
宝塚が好きなのに頑張れなくなったとき、どれほど仲間やお客様の支えに背中を押してもらったことか。その支えが大きな力になることを知っている。
最近、毎日を過ごすことに疲れてしまったとき、また「頑張るきっかけ」をくれたと感じる出会いがあった。
それは、ボートレースとの出会い。正直、最初はギャンブルのイメージがあった。でも、知れば知るほど、想像以上に熱い。命懸けで、それでも勝負に勝たなければならない。フライングすれば、1ヶ月の出場停止。接触すれば、転覆して水に投げ出されることもある。それでも数十分後には、新しいボートを整備し直し、再びレースに向かう。
勝負の世界で、頑張り続けることの苦悩も喜びも経験し、どれだけ心を削られることがあるのか。舞台で生きてきた私にも想像しきれない世界だった。
好きなだけじゃやっていけない。でも、ボートレースを心から愛し、年齢も性別も関係なく、それぞれが目標に向かって切磋琢磨している姿に私は心を打たれた。
そして思った。どんな世界でも自分を信じて挑み続ける姿は人の心を動かす。
たとえ小さな歩幅でも、寄り道してしまっても、自分の足で歩いてきた道は振り返ると丈夫で大切な道となる。
これまでたくさんの「頑張るきっかけ」をもらってきたように、
今度は私が、誰かが前を向くために、そっとその背中を押せたらと願う。
MIDORI.so Newsletter: