COLUMN #155 酒田市と私とおもひでと

先日、友人たちと山形県酒田市を訪れた。両親の故郷で、学生時代には夏休みに訪れていた定番の場所だ。祖父母が亡くなってからは、しばらく足が遠のいていたが、最近になって再びこの地を訪れる機会が増えてきた。
数年前、祖母の見舞いで訪れたとき、酒田駅でタクシーに乗ると、運転手さんが山形弁で勢いよく話し始めた。一緒に来てくれた友だちは一言も理解できない様子だったが、私は自然にその言葉で会話をしていた。祖父母との関わりで知らぬ間に身についていた山形弁。友人の驚いた顔を通じて、自分の中に山形が深く根付いていることを実感した。
昨年は母を連れてお墓参りに行き、今年は2泊3日で友人と酒田旅行に出かけることにした。観光という名目で、久しぶりに酒田の街をじっくりと味わおうと決めたのだ。正直、観光といっても何があるのか見当もつかなかったが、意外と行く先々で新しい魅力を発見することができた。 まず、酒田のお米と魚は驚くほど美味しい!フルーツも豊富だ。さらには、遠くに見える鳥海山の雄大さに心を奪われ、「あぁ、父があの山についてやたら語っていたのも無理ないな」と、昔はうっとうしく感じていたその話も今では懐かしく思えた。
ふと、小学生の頃のことを思い出す。祖父母の家が大好きだった私は、両親が「もう山形に住んで学校も転校したらいいね」と言ったのを真に受けてしまい、翌日には何も考えずに担任の先生から転校届をもらってきてしまった。両親は呆れていたが、今にして思えば、それほど酒田が特別な場所だったのだろう。
そんな酒田が私たちの旅行からわずか2週間後に、思いもよらぬ災害に見舞われた。線状降水帯による記録的な大雨が続き、つい先日まで青々と広がっていた田んぼが一面の水浸しになったと聞いたとき、胸が締め付けられた。さらに、高齢化が進んでいるため復旧作業も遅れているとのこと。状況を聞くたびに、心が重くなり、何か自分にできることはないだろうかともやもやと考えている。
実際にその地を訪れると、過去の思い出が蘇るだけでなく、風景や空気までもが新たに生き生きと心に刻まれる。そして、災害や何かが起きたとき、その場所は単なるニュースではなく、具体的な情景として胸に迫ってくる。これからも、様々な場所を訪れ、その土地の空気や文化を直接感じることを大切にしていきたい。新しい風景や出会いが、私の世界観を広げ、人生をより豊かにしてくれると信じている。
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