COLUMN #125 縁切りのススメ

昔ね、会社休んでふと京都にいったんですよ。有名な縁切り神社に。
コロナ禍の真っ只中。あのときの僕はとにかく病んで疲れていた。ストレスが溜まりに溜まり「働くことから逃げよう」そう決めたのは深夜2時。インターネットで「縁の切り方 神社」を調べ、見つけ出したのは京都の安井金比羅宮。Googleのクチコミを読むとかなり強力なのが読み取れたし「そうだ、京都いこう」じゃないけど、どうしても行かねばって気分になったんです。
すこしの睡眠を取り、開かない目をこすりながら会社に「今日休みます」のメールを1本送り重い足取りで早朝の新幹線に飛び乗った。京都駅に着いてすぐにタクシーを拾い目的地に向かう。数時間前までインターネットで調べていた神社が出迎えてくれた。ここの神様は少々強引に縁を切るところがあるそうで、単純に縁を切りたいと願うと自分に不幸が起きてでも縁を切る可能性があるから相手の幸せを願うように書くのがコツなんだとか。僕は小さな紙に縁を切りたい人たちの幸せをいっぱいに書き込み、境内にある真ん中に穴のあいた大きな縁切り碑の穴を闇雲にくぐった。穴をくぐることで悪縁を断ち、裏からくぐることで良縁を結んでくれるそうだ。
続いて向かったのはまん延防止措置で誰もいない清水寺。その清水寺の敷地には縁結びで有名な地主神社がある。恋愛の縁結び目的で来ていた浮かれ顔の参拝客に続いて死んだ顔をした僕は仕事と人の良縁を願った。願掛けをし終えるとふと高台から京都の開けた街並みが見えた。じっくり景色をみることも忘れるほど切羽詰まっていたことに気づいた。そして全部のお店が閉まった静かな二寧坂をくだり鴨川まで歩いた。目に飛び込んでくる6月の新緑が眩しくて世界は明るく見えたし地元の人しかいない京都はとても静かでとても美しかった。
東京に帰る前に一杯飲んでおこうとオープンして間もないとあるホテルのコーヒースタンドに向かった。ドリンクを飲んで涼んでいるとホテルの方に声をかけられた。僕は「縁切りしに京都に来たんですよ」と告げると「縁切り神社に行ったってことは、これから良い縁がくるってことですね。今日ここに来たのもきっと何かの縁ですね」と。その言葉を聞いたら「部屋空いてますか?泊まっていきます」と口から出ていた。日帰りするつもりだったから着替えも何も持ってなかったけれど京都で休むのがいいと思ったのだ。僕は思いがけない京都ステイを楽しみ、軽くなった足取りで東京に戻った。今思えばこの時から縁切りの神様は僕の願いを叶えはじめてくれてたのかもしれない。
昔ね、会社休んでふと京都にいったんですよ。有名な縁切り神社に。仕事を休んでまで行くことだったのかなってほんの少し反省してます。
ん?願いが叶ったか気になります? もちろん叶いましたよ、詳細は言えないですけどね。悪い縁を切った後には良縁と結ばれるということであれば、今僕がここMIDORI.soにいるってのが答えになってるんじゃないかなって。あの日あのとき京都に行ってよかったなって、心からそう思います。
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