COLUMN #123 迎春

Topic: ColumnWritten by Naohiro Kiyota
2024/2/2
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あけましておめでとうございます!もう2月ですね!!

正月には「迎春」とか「賀春」と書かれた年賀状(死語になりつつありますが)をもらったり、箏曲の「春の海」があちこちで流れてきたりしますが、そんなに「春」を推されても違和感があるなあと子供の頃からずっと思ってました。外を見ても雪が降ってるし、草は枯れてるし、木の葉は落ちてるし、寒いし、どこが春なんだと。うちのおせちの重箱には梅の花が描かれてますが、梅なんかまだどこにも咲いてないし。2月になってようやくポツポツ咲いてくる感じですし、季節を先取りするにも、ちょっと無理があるのではと。ファッション誌の撮影現場でもあるまいし。


中国やアジアの一部では2月の頭に旧正月を祝いますが、最近は僕も山の暮らしが長くなり、旧正月の方がよっぽど正月っぽいな、と思うようになりました。明治以前の日本では中国と同じように、旧正月が本来の正月でした。現在の太陽暦と昔の太陰暦の違いについて詳しく述べませんが、ざっくりいうと、現在の太陽暦の正月は宗教上の理由から生まれたもので、太陰暦の旧正月は季節(農業)を元にしてると言っても過言ではない。そして日光と言えば華厳の滝、過言ではない。


太陰暦とセットで使われてきた、1年を24の季節に分ける「二十四節気」では、冬と春の境目である「立春」あたりが旧正月になります。冬至と春分のちょうど真ん中、まさに今から春になるぞ! という季節が昔の正月だったわけです。なるほど、そうだったのか! と。この時期に「迎春」と言われてもしっくりくるし、中国の人たちが今でも盛大に旧正月を祝う気分が感覚的にも身体的にも理解できます。


だから、今の正月をむりやり祝うのはもう卒業しようかなと思っています。うちでは毎年正月に壱岐対馬の天然寒ブリを1本仕入れて捌いて家族で食べたり親戚に振る舞ったりするのですが、これが年末に買うとすごく高い。寒ブリに一番脂がのって美味しいのは2月頃、でもその頃には年末の半分くらいの値段に落ち着いてます。食べ物から旬がなくなってきてるとよく言われますが、旬を見分ける一番の方法は、たくさん安く売られているものを選ぶこと。季節に寄り添って生きることができると、環境にも身体にもお財布にも優しい気がしますね、なんのこっちゃ。

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