COLUMN #116 クリエイティヴって不安定 ~ロンドン逃亡記~

「あなたともう一緒に仕事したくない」
3年前に、あるプロジェクトで一緒に仕事をしていた人に言われた言葉。仕事での対立、プライベートでの対立、世の中で起こる対立、パンデミック、疲労、多忙。。自分のなかで癌のように積もっていって、ちょっくら、ちがう世界に消えて行ってしまおう、、。と、夏の4ヶ月間、ロンドンに留学(逃亡?)してきました。
勿論理由はそれだけではなく、語学学校と、Royal College of Artという美大のショートコースに参加するという目的も。
私の住んでたエリアはイースト・ロンドンのHackneyというエリア。数十年くらい前は治安がかなり悪く、でも賃料が安かったので、若いアーティストやクリエイターが住み始め、とても面白いエリアになったと言われている場所です。(ただ近年は人気になって賃料もあがっているので状況は少し違うそうです)移民の多いこのエリアは、約40%が黒人やエスニックマイノリティ出身者で、区内では約90の言語が話されていると言われています。
治安の悪さはまだ健在で、深夜にホームレスの男性に追っかけ回されたり、逃亡中の強盗犯とすれちがったり、ひったくりの瞬間を見ちゃったりとか、ちょっとそれなりに怖い思いもしました。
通学路の運河沿いを歩きながら、爆音で音楽を流しながら自転車で通り過ぎるお兄さんから流れる音をShazamして新しい音楽を知ったり、壁に描かれたグラフィティを見て新しいタイポグラフィについて考えたりと、街のノイズをインスピレーションに変えながら過ごす毎日。
週末に開かれるBlack communityのパーティー、Sunday Surviceで教会から流れてくる聖歌、超正統派ユダヤ教徒、ムスリムの人たち。自分のルーツに誇りを持ちながら生きる人たちの姿はやっぱりかっこいい。
未開拓でアナーキーな場所ほどおもしろいのは、見えない先をつくっていく好奇心や、対立などから生まれる葛藤や怒りがエネルギーになって良い渦をつくっているからだと思う。
自分が悲しいと感じたり、怒ったり、悔しいと思った気持ちは、消すんじゃなくて大事にしながら、クリエイションで昇華していかねばなと思います。そんな気持ちでまた持ち場に戻るのでした。
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