INTERVIEW case#9 WE Collaborate Here “自分のアイディアに対して、自信をもつきっかけをくれるのは他人の意見なのかもしれない

Topic: InterviewWritten by Miho Koshiba
2018/9/9
Tsutomu Saito

誰かと一緒に働くこと、一人で働くこと。どちらが今の自分に最適なのか。成すがままにその時々で自分の働き方を選択してきた。みどり荘中目黒メンバー・インテリアデザイナー斉藤力さんにインタビュー。


斉藤1年くらい家で仕事をしていたけれど、やっぱり、こういうだらしないタイプは、職場環境と住宅環境を分けた方がいいなって。休憩がやたらと長い。() だから2012年の春にみどり荘ができて、その夏に入って。かれこれ6年。わりと気ままにやっているよね」

みどり荘に入る以前に、インテリア事務所を立ち上げ、「Glam」という屋号の元、数人から成るチームを切り盛りしていた斉藤さん。リーマンショック後にチームは解散し、その中の数人が現在みどり荘にいる。各々が各々の仕事を持つ傍ら、プロジェクト単位で一緒に仕事をすることもあるようだ。

斉藤「今も(中目黒メンバーのデザイナー)山田と一緒にやったり、一人じゃ手に追えないところは一緒に。基本的に、俺ってそういうコツコツ着実にプロジェクトを推進する能力がない。結構場当たり的に、感覚的に物事を決めてしまうことが多い。山田は逆。彼はマネージメントに長けているタイプ。だから、Glamの頃は、彼らに滞りなくプロジェクトを推進してもらっていた。今にして思えば、ああそういう人たちに助けてもらったんだなって」

saito2

Glamを立ち上げる前は、外資系アパレルブランドの日本事務所にてインテリアデザイナーとして5年ほど働いていたそう。

斉藤「デザインマニュアルというものがあって、どの店舗も全部同じデザイン。レイアウトは当然違うけれども。そんなの面白くない、俺はそこが嫌でやめた」

斉藤「ただそこで(アパレルブランドにて)得たものはある。店づくりの骨格。表面に見えない店の作り方とかを学んだかな。例えば動線。お客さんをどう動かして、どう買い物をしてもらうか。基本的になんでも、お店でも飲食店でもレイアウトってすごく重要で、そこでほぼ決まるんじゃないかな。目に見えるところは30パーセントもあるかなっていうくらい」

企業のアパレルインテリアデザイナー、Glamでのデザイン事務所を経て、現在一人で働くようになった斉藤さんは、何を思うのか。

斉藤「仕事って広範囲にわたってやらなければいけいないことがあるじゃない、単にデザインだけをやっておけば誰かが進めてくれるわけでもなくて。仕事のうちの大部分は、施主とのコミュニケショーン。施工屋との調整、打ち合わせだったり、そういうところに時間や労力が割かれる。嫌な部分もやらなきゃいけないところが、一人でやるところの難しさ。一人でやってしまうと気楽なのが優っているから。プロジェクト単位で人と一緒にやる分には、いいなって今は思う」

斉藤「矛盾しているんだけれど、誰かが横にいてくれる安心感ってあって。やっぱり仕事をしていく上で、迷うってあるよね。ここってこうしたほうがいいのかなって。そこを全部自分で悪戦苦闘しなければいけないところの難しさがあるかもしれない。誰かに聞いたところで、結果俺の方が正しいってなるんだけど。() でも、自分のアイディアに対して、自信をもつきっかけをくれるのは他人の意見かもしれない。確信を得るっていうか」

そんな斉藤さんがみどり荘に入って5年以上も経った2017年、みどり荘メンバーが関わる新宿のホテルプロジェクトの一員に加わった。

斉藤「去年の夏に現場を見に行って、途中いろいろあったけれど、結果よかったと思っている。( 流石創造集団株式会社の)堀之内さんがディレクションをして、彼が全体を見ているから、その世界観に対して俺のデザインの道筋を立ててくれた。彼の方向づけの中で仕事ができたってところは、面白い現象だった。さっきの話だと、一人で全部決めなればいけないところに関して、第三者が介在して、その意見を取り入れつつ、自分じゃ得られないような天井の色とか、考え付かないようなことや今までやらなかったことを引き出してくれた。だから人と組んでやるのも悪くないなって」

saito3


一人で働くことの気楽さと大変さを噛み締めながらも、誰かと一緒に働くことで自分にはない視点を受け入れていく斉藤さんにとって、仕事とは一体なんなんだろうか。

斉藤「いやあ、そこだよね。それを改めて突きつけられると答えようがないよ。だって何仕事って(笑)生きるためにお金を稼ぐ行為=仕事なのかな。自分の場合、結果そうなっているにしかすぎない。好きなことをやっていて、幾ばくかの報酬をもらって、ごはんを食べている。改めて仕事って問われると、答えようがない。適当って言い方もあるけれど、それくらい自然にやっている」

斉藤「おれもいい年で、50歳。そんな年の人間が適当にやってきたのがまずいよね、今更どうにもならないよ。(笑)とはいえ、変えようがないし、変えたいとも思わない。このままなすがままに流れていくしかない。将来人生設計とか立てて、それに向かって突き進んでいる人たちっているでしょう。俺は無理だろうな。(笑)」

己自身を知った上で、流れに身を任せ、自分にとって居心地の良い状態を保ち続ける斉藤さん。また会社を立ち上げ、拡大をしていきたいと考えるのか。

斉藤「(拡大したいとは)思わないね。ほかの部分で悩み事って増えるじゃない、経営的な部分とか、従業員の給料とか。そういうことが一切ないほうが今は楽。一人で食えていければって今は思ている。マネージメントするって才能だもの。その能力がないことはつくづくわかっている」

斉藤「デザイナー肌とディレクター肌の人がいて、二分されると思っている。大枠許せるなら、もっと多くの人を雇って、ディレクションをしていけばいい。俺はそこまで細部にこだわっているわけじゃないけれど、デザインの領域においては1から10やりたいっていう欲求はある。だから、結果やってしまうんだよね。俺だったらこうするのに、違うことをされることに違和感を覚える。それだけの理由。そこがもし許せる度量があるなら、だいたい同じ路線上に進んでいるのなら、もっと人を雇って仕事ができるんじゃないかな」

saito4

-斉藤さんにとってみどり荘とはどういう場所か

斉藤「意外とほっとしているところもある。一人で悶々と家でやるよりは、くだらない会話に加わったり、聞き耳を立てたり(笑)、そういう人の気配を感じながら仕事ができる、ほっとする環境、場所だね」


Tsutomu Saito

Interior Designer

栃木県日光市出身。2001 Design Studio GLAM設立。2012年みどり荘入居。飲食店、クリニック、ブライダル、リテイル、ホテル、住宅など空間に纏わるあれこれに関わる。クライアントに寄り添い真心を込めて作られた空間に定評がある。

http://www.studio-glam.com/sp/


MIDORI.so Newsletter: