COLUMN #76 beyond borders

Topic: ColumnWritten by yoshitaka shimura
2023/2/10
beyond borders

志村不動産です。エピソード7です。2年間のLA生活を終えて2010年に帰国してすぐ、池尻の「PUBLIC/IMAGE.3D」でグループ展を開催した。Megane Zine参加のJun Oson、花井祐介、大西真平、LyYu Nagabaらに加え、Geoff McFetridgeEd TempletonJesse LeDouxも参加してくれた。Ooga BoogaからはRaymond PettibonZineを販売。その他、DublabHVW8も参加した。オープニングは盛大だった。友達という友達、知り合いという知り合いがほぼ集結した。なんだか凱旋帰国したような高揚感があった。

帰国後は父の会社に営業部長として入社、事務所は虎ノ門にありスーツを着て出勤した。あの高揚感をひきずりながら、生活のために産業系の営業職をしていたのはもどかしかった。Meganeの仲間とも今までと同じような距離感ではなくなってしまい、ひそかに疎外感を感じていた。それでも、定期的にみんなで集まって活動を続けた。それが僕の生きがいだった。

20117月「ZINES MATE / TOKYO ART BOOK FAIR 2011」に出展。その時、たまたま隣のブースだったのがオープンして間もないギャラリー・ターゲットだった。僕は飲食禁止の構内に大きなクーラーボックスを持ち込み、自分たちのブースに隠した、中にはビールをたくさん入れて、会期中はブースでひたすら呑み続けた。午後になると終了時間を待たずに帰る。紙箱に「ほしい人はここにお金を入れて!」と書いて置いといた、疲れたら無人式に切り替えた。後にターゲットからグループ展をやらないかとオファーが来た、僕たちの自由な感じに惹かれたとのこと。

9月にはhpgrp GALLERYの誘いでルミネの催事場で「Megane Zine Shop」を約1か月間オープンさせた。僕は木材で棚をつくった、それに花井くん、Ly、大西くん、かえる先生がペイントしてくれた。このラックは、まだ部屋に置いてある。そして、販売するZineをつくった。でも、問題は店番をしないといけないということだった。店頭に立つには「笑顔研修」という酷な研修をパスしないといけない。講師は、いかにもという感じの女性で、常にハイテンションだ「今日の最後に笑顔大賞を決めますので頑張りましょう!」という号令とともに、笑顔の特訓が始まった。普段、顔の筋肉を極力使わない僕には苦い思い出にしかならない。ちなみに栄えある笑顔大賞に輝いたのは大西真平だった。

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20123月、ターゲットでMeganeとしては最後のグループ展を開催。アメリカに行く予定があり、スリフトでふざけたレコードや、額、食器などを買ってきた、要するに古道具にペイントして展示しようということになった。オープニングは大盛況、ものすごい多くの人が来てくれた。たまたま日本にいたマニー・マークをマットソン兄弟が連れてきてくれた。自分が主催する展示にマニー・マークが来てくれるとは!!、僕はそのSure Shotに有頂天だ。
しかし、当時はアートを買うという習慣がなかった、作品はほとんど売れず、最後に1万円でそれぞれの作品をターゲットの水野さんが買ってくれた。間もなくして、海外の古道具にペイントして大規模なグループ展を開催した他のギャラリーがあった。僕は細々とMeganeの活動をしていたが、本気でやっているやつらの威力と資本力はものすごい。アイデアをパクられた、僕はそう思ったが、それが作家のためであれば、僕と活動を続けて行くよりもマシなのかもと感じ、妙に納得した。

そんなとき、ポートランドのGrass Hutが花井くんとJesse LeDoux2人展に誘ってくれた。Jesseは元SUBPOPレコードのアートディレクターだ。僕はこの企画を最後に本業の産業系の営業部長に専念することを決意した。シアトルには1人で行き、Jesseの家に泊まった。SUBPOPを案内してくれた、すでにオーナーは変わってしまったが随所に90年代グランジ・ムーブメントの痕跡があった。MudhoneyMark Armに会えた。そして、花井くんが到着した。いよいよポートランドに移動して、Grass Hutでの展示の準備をしていたとき、旅行中のかえる先生が立ち寄ってくれた。一緒にバーンサイドでスケボーをした。

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よし、最後に良い思い出ができたぞ!
日本に戻ったら、なんだかすっきりしていた。2015年、父親が引退。会社を引き継ぐことになった。

つづく

@megane_zine

http://www.stargraphics.jp/blog/

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