COLUMN #36 work = life

Topic: ColumnWritten by Sakiko Masuda
2022/3/25
#36 work = life

会社員をしていた頃、職場に一番嫌いだった空間がある。従業員休憩室と呼ばれる部屋で、白い壁に白い蛍光灯、無機質な事務椅子と長机が同じ方向にずらっと並んでいた。そこには無言でコンビニ弁当を食べる人、黙々とスマホを見る人、机に突っ伏して寝る人。どうせ短い時間しかいないんだからこんなもんでいいでしょ、そんな作った人の声が聞こえてきそうな思いやりのない空間だなと思ったのを覚えている。

MIDORI.soに初めて足を踏み入れる人は、ここは一体何の場所なんだ?と混乱する人が多いようだ。広いキッチンに、みんなで食卓を囲めるような円卓。大きいソファに本棚。心地いい音楽。美しく生けられた花。壁に佇むアート。キッチンでコーヒーを淹れている人もいれば、ソファでごろんと寝ている人、円卓で家族のようにご飯を食べている人たち、夜には冷蔵庫からビールを取り出してきて、自然と集まって飲み出す人たち。でもさらに中に足を踏み入れるとちゃんと働く空間があって、黙々と働いている人たちもいる。ここは家なのか?カフェなのか?飲み屋なのか?ギャラリーなのか?本当に働く場所なのか?

実はその混乱こそが、日本社会でガチガチに固められた「働く」の固定概念を壊していくことでもあり、働くことと生きることを分断せず、人間らしさを取り戻していくことでもあるんじゃないかと思っている。

来週オープンするMIDORI.soの新しい拠点「NIB SHIBUYA powerd by MIDORI.so」でも、そんなMIDORI.soのフィロソフィーが体現できるような場所を悩みながらつくっていった。作る側になって気付くのは、昔の職場と比べた時、MIDORI.soには「していい」の幅が大きいんだということ。働きに来ても時には思いっきり寛いでいいし、心通う人に会いに来てもいいし、ビールを飲みながら仕事したっていい。そんな風に、個が尊重されながら自由にのびのびと働ける場所になるように。多様な個が集まる渋谷という場所で、また新しい何かが生まれることを楽しみにしている。

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