COLUMN #181 感覚をひらく
Topic: Column / Written by Hiroka Ume /
2025/4/11

昨年のクリスマスにかねてから欲しいと思っていたものを手に入れた「オタマトーン」。
ご存じない方のために紹介すると、オタマジャクシにも見える音符の形をした電子楽器である。ちなみに私はオタマトーンの回し者ではなく、純粋にオタマトーン開発者・明和電機のいちファンである。何に惹かれたかというと「ここを押せばドが出る」というマニュアルがなく、自分で触って「ここはこういう音が出る」を感覚的に身体で覚えるしかないというところ。
絶対音感はないがピアノを習っていたからこそ「ここを押せばド」に慣れすぎていて、いざ子ども(6歳男子)からルパン三世のテーマをリクエストされると永遠に弾ける日が来ない気がして途方に暮れた。辛うじてひねり出した音は、ゲゲゲの鬼太郎の「ゲゲゲのゲ〜」とチャルメラ。これが初日の限界だった。YouTubeで先駆者たちの演奏を見ながら、日々練習である。
楽器を弾く前段階の「音を身体で感じて覚える」という経験は、自分に新鮮な驚きをもたらした。耳も指も(オタマトーンは指で演奏する)感覚がひらいていくような感じ。きっとピアノを始めた時も、同じように感覚がひらいたのだろうと想像するが、今となってはまったく覚えていない。今のオタマトーンのこの感覚も、いずれ慣れて自分の感覚のひとつになっていくのだろうか。そうしたらまた、新たな感覚をひらく何かを探すのだろうか。
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