COLUMN #158 人生は何が起こるかわからない

ある日ふと保護猫を迎えようと思い、里親サイトを眺めていた。保護猫の里親になるには、数々の厳しい条件があることに気付かされた。転勤のない仕事についていること、猫が生きている間の転職不可、単身者は不可、内縁関係不可、賃貸不可、若齢すぎず高齢でもないこと、あれもダメ、これもダメ、とにかく条件が厳しい。絵に描いたような、理想的な親子暮らしの家庭でなければ里親にはなれないのだ。
何件かアタックするも断られてしまい心が折れそうに。これはもうペットショップで血統書付きの猫にするしかないと思い始めていたところ、「厳しいことは言わないです。だって人生は何が起こるかわからないから。ただきちんと愛情を持って猫を育てられる人、定期的に猫の写真を送ってくれる人」という条件で譲っていただける方を見つけた。
そしてついに猫との暮らしが始まった。ふわふわとした毛玉(猫)はあっという間に生活の隙間に入り込んできた。朝、目覚めると、隣に猫がいる。目覚ましのアラーム代わり鳴き声で起こされる日もしばしばある。
猫は気まぐれとよく言われるが、実際に暮らしてみると、犬のように絆をしっかりと感じさせてくれる瞬間がある。たとえば、ベッドで寝転んでいると、突然胸の上に乗ってきてゴロゴロと喉を鳴らしたり、時には、隣にピッタリとくっついてきては大きな瞳でじっとこちらを見つめたり。一瞬たりとも目が離せないほど愛くるしい。
ただ、猫と暮らすことは、美しい瞬間だけではない。季節の変わり目になると、家の中は猫の抜け毛で埋め尽くされ、掃除を毎日しても追いつかない。アレルギーを持つ人にとっては、まさに悪夢のような光景だ。そして、夜中の大運動会も毎晩行われる。猫飼いなら一度は経験するであろう、ドタバタと部屋中を駆け回る猫の習性。そんな毎日の中でも、猫との生活はやはり特別で、かけがえのないものとなっている。
そして、猫の寝顔を見つめながらふと思い返してみる。猫と暮らすことになったのは、まさに『人生は何が起こるかわからない』そのものだった。あの日、保護猫を迎えようと思った自分に、今のこの充実した日々を教えてあげたい。
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