COLUMN #14 watarigarasu

見通しの効かない時代を攪拌し、新たな価値観を生み出してきたのは、いつだってイノベーターやクリエイターと呼ばれる人たちであった。これからするのは、そんな話だ。
「クレイジーなヴィジョンを実現させたいなら、ハッカー、ヒップスター、ハスラーを揃えよ」
地球で最も影響力をもつエリアのひとつであるシリコンヴァレーには、そんな言い回しがある。ここでいうハッカーとはエンジニアやプログラマー、ヒップスターはデザイナー、ハスラーは資金調達に長けたビジネス担当者のことを指し、数限りないこの「トリオ」が、これまで、世の中を大なり小なり変革してきた。しかしコロナ禍によって、これまで培ってきた「社会通念」やら「ビジネススキーム」等々が通用しない、先を見通せない時代がやって来た。
そんな不確実で、複雑で、曖昧な時代を、しぶとく、楽しく乗りこなしていくには、これまでとは違う人物──例えるなら、既成概念を打ち砕き、常識を攪拌し、破壊と生産をおこない、結果として果報をもたらす人物──が必要になってくる。そうした人物のことを、人類は古くから「トリックスター」と呼んできた。
「WATARIGARASU」は、ひとりでも多くの「時代を攪拌する者=トリックスター」を育て、世に放つことを目的とする運動体であり、「攪拌する者」を必要とする社会を醸成し、彼/彼女たちが流動的に働けるネットワークを構築していくシンジケーションである。
なぜ、WATARIGARASUかって? それはワタリガラスこそが、数々のトリックスターのなかでもとりわけ、自由奔放な行為ですべての秩序をかきまわす「神話的ないたずら者」として多くの文化圏に棲息し、人類学、神話学、心理学、社会学、文学、アートを通じて今日まで語り継がれてきた叡智の象徴だからだ。
付け加えるなら、この期に及んで、硬直化したまま一向に流動性を帯びない「働き方に対する社会通念」にケリを入れる意味も込められている。例えば建築設計事務所に所属するトリックスターが、いっとき行政に参画し、硬直したシステムを攪拌(=改善)した後、また別のどこかへワタリガラスのごとく飛び立っていく……といった働き方が「おもしろい」とされ、それが「あたりまえ」になる社会を涵養していくことで、国内外のクリエイティブ人材により光を当てることも、WATARIGARASUが掲げる最重要ミッションだ。
社会を攪拌するトリックスターになりたい人、そして、そんなトリックスターを待ち望んでいる人や組織や企業や行政等々の方々、WATARIGARASUへアクセスせよ。
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