COLUMN #118 好きこそものの

台湾旅行に行って以来ずっとおいしい豆花を日本でも求めている。豆花の文字があると立ち止まってチェックする。なかなか理想の豆花に出会えないので自分で作ってみたが、やっぱり本場のものとは違う。多分固める粉が違うのだ。検索に検索を重ねてもこれといった情報はなく、結局豆乳とゼラチンで作る豆花が日本での最適解であり、ゼラチンの量でどれだけほんまもんに近づけるかの格闘となる。
先日京都で豆花の文字、そして豆乳スープの写真を見かけた。手書きの文字は明らかにダサい。写真も、看板も何もかもダサい。私の理想の豆花にここで出会えるのか確証が持てず、結局その日はその店に入らずに終わった。ただ、なんとなく、むしろあの店の感じが気になっていた。いったいどんな豆花を出すのか。
数日後その店の隣の郵便局に行く用事がてら、もういいやと思い切って入ってみることにした。入ってみるとどうやらスナックの居抜きで、家具はなんだこりゃというあべこべさ。店主もなんとなーく怪しい感じ。最近は特に食で満足するかが生きる上で重要だという人生のフェーズに来ているので「あーしまった失敗した」という気持ちが湧き上がるがもう後には引けない。
豆花と豆乳スープと、胡椒餅を注文した。待っている間にお店を見渡すと実は専門的な胡椒餅を焼く窯と忙しなく働いている店主の姿。お店のポップはよく読むと、頑張って作っていることが伝わってくるメッセージ。イケるかも!希望が湧いてきた。
そして出てきた3品。おいひい!(胡椒餅は熱々だった)豆花はもうちょっと本場に近づける気がしたけれどそれでも豆花もどきではない!
店主は日本人だが、義理の弟が台湾人で台湾によく遊びに行っていたら、豆花と豆乳スープと胡椒餅が痛く気に入り、お店を始めることにしたそうだ。特に店主は胡椒餅が好きで専門窯まで輸入してしまったほど。モーニングが390円で提供されていて、これはPR施策だとか。
これまでどのようなことをしてきたのかはまだ聞けていないが、自分が好きになったものを再現して商売をしてみるってなかなかの勇気だ。ブランディング云々よりもまずはやってみる。それも大事だよな、と胡椒餅をお土産に買って帰った。
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