COLUMN #34 collaboration

Topic: ColumnWritten by Mei Kinoshita
2022/3/25
#34 collaboration

こないだの日曜のこと。久しぶりにクラシックを聴きに行った。友人がチェリストなこともあり久しぶりに会いたい気持ちが90%で臨んだ演奏会だったのだが、私は2曲目で涙していた。びっくりした。幼い時にはあんなに眠かったクラシックで。

目の前の演奏者は楽譜の中に作家の見た情景と感情を手探りで探し出し、これだと思う音を一つ一つ紡いでいた。その姿に緊張感と潔さ、放たれ去っていく音に対する肯定を感じ、旋律の美しさだけではなく、私は演奏者の一音ごとの丁寧な試みに涙したのだと思う。

作曲者も演奏者もここに至るまで沢山のことがあっただろうよ、と。

先人から学び、敬愛の念を持ち、自分なりの解釈を加えて試してみる、そして小さな発見を積み重ね、健全に面白がる。この繰り返しは毎日の私達であり、特別なことではない。しかし少し意識するだけで毎日の中に特別の連鎖を作れる。それだけで人生はとても楽しい。

でも繰り返しを継続する中で失敗や間違い、悔しいことや傷つくことなど真剣であればあるほど経験する。奏でる音楽が美しければ美しいほど、そこに至るまでのことに想いを馳せて共感したのだろう。

私もその過程を仕事を通して沢山してきているから。

逆に言えば私にとってビジネスも音楽のようにロマンチックに感じる。誰が何から発想を得て、どう解釈して、何を試し、何を見つけたのか、そしてどう引き継がれるのか。知れば知るほどドラマチックなのも似ている。芸術と同じようにビジネスを通した表現者がいて、世界に彩りを加えている。

働きながらロマンを求めた結果、数多の仕事に関わってしまい、よく「めいさんは何屋なんですか?」と聞かれる。その時には「そうねー、何でも屋さんになっちゃったねー」とはぐらかしている。だって「みんな色んなジャンルの芸術、映画、音楽に触れるでしょ?同じだよ。仕事もすごくロマンチックじゃない」なんて恥ずかしくて言えない。

さて、今日もいい日にしよう。

木下明|Mei Kinoshita
東京生まれ、イスタンブールとシンガポール育ち。株式会社MONOLITH創業後は大中小企業の新規/既存事業開発をサポート。MIDORI.soの経営にも携わっている。

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