INTERVIEW case#40 We Collaborate Here 「解らないこと」を面白がってみる

Topic: InterviewWritten by Tamao Yamada, MIRAI INSTITUTE, At MIDORI.so Bakuroyokoyama Gallery
2022/7/11
Interview

2022620日(月)より715(金)まで、Galerie Supermarkt(ギャラリーズーパーマルクト)との合同キュレーション展「In Between」をMIDORI.so Bakuroyokoyamaにて開催中。本展のディレクションを務めた入木龍生さんは、現代美術を扱うコマーシャルギャラリーを離れ、20代後半の若いメンバーらとともに新たな活動を始めた。世界のアートマーケットを見つめ、作品の新しい在り方を提示する彼らが描く現代美術の未来の姿とは。現代美術の面白さ、楽しみ方から、本展の見所、今後の活動の展望まで様々な話を伺った。

Interview / Text Tamao Yamada
Photo Yui Saito & Shun Wakui
2022.07.11


僕と代表のカクは、同じ現代美術のギャラリーで一緒に働いていました。僕は3年半ほど勤めて、コマーシャルギャラリーがどのように回っているのかということが少しづつ分かってきたんですよね。それで、カクが退職するタイミングで、「一緒に何かやらないか」と声をかけてくれたことがGalerie Supermarktの始まりでした。僕は当時、海外のギャラリーで働くことや日本の他のギャラリーに転職することも考えていたのですが、それだと半年後に自分が何をやってるのかということが大体読めてしまい、その選択はつまらないなと思っていたところでした。まだ20代後半ですし、チームメンバーであるカクとジョイと僕は、3人それぞれ違う角度からアートに携わってきたので、お互いに役割を補い合いながら何か面白いことができるのではないかと思ったんです。

Interview

ホワイトキューブではできない新しいギャラリーの在り方を提示する

”Galerie Supermarkt”という名前の由来は?

名前はカクがいつの間にか決めていました。一緒にやらないかと声をかけてもらった時、僕は迷いしかなかったのですが、気が付いたらロゴや名刺、会社の資料まで完成していたのでその勢いにそのまま流されてみたんです(笑)。“Galerie Supermarkt” はドイツ語で、そのままスーパーマーケットを指す言葉です。カクが「ズーパーマルクト」という音が好きだということもあるのですが、カジュアルな名前を使うことで、アートをもっと様々な層にアプローチすることを活動のコンセプトの一つとして据えています。僕たちがやりたいことはコマーシャルギャラリーのプレゼンテーションとは少し異なり、例えばファッション業界の方とコラボしたり、次の11月には京都の築100年を超える蔵を改築したスペースで展示をしたりと、その場所が持つ空気を汲んで、ホワイトキューブではできない作品の見せ方ができたら面白いなと思っています。

ー入木さんはどのような立ち回りをされているのでしょうか?

僕はディレクターとして、作家に実際に会いに行き、趣旨の説明やプレゼンテーション、海外から作品を持ってくる際の手続きをしたり契約書を作ったりと実務的なことまでやります。前職でやっていたことの延長線上ではありますが、今は自分が表に立って交渉することができるので、裁量権があって楽しいです。

アートにはプライマリーマーケットとセカンダリーマーケットがあり、プライマリーマーケットとは、今回の展示で僕らがやってるように作家から直接作品を貰って展示することを指します。セカンダリーマーケットは、いわゆるオークションなどのことですね。代表のカクは元々オークション会社で働いたこともあり、セカンダリーにすごく長けているんです。僕は、アーティストにどっぷり浸かりながら作品をみてしまうことがあるのですが、彼はマーケットとの兼ね合いなども意識しながら、常に冷静な視点を持って作品をみているので、そういう点を尊敬しています。一緒に仕事をしているけれど、僕はプライマリー寄りで海外のスタジオに飛んで交渉し、アーティストと一緒に展示を作っていき、彼はマーケットを意識しつつバランスをとりながらダイレクトにコレクターと繋がっていく、ということをそれぞれしています。

Interview

ホワイトキューブではできない新しいギャラリーの在り方を提示する

”Galerie Supermarkt”という名前の由来は?

名前はカクがいつの間にか決めていました。一緒にやらないかと声をかけてもらった時、僕は迷いしかなかったのですが、気が付いたらロゴや名刺、会社の資料まで完成していたのでその勢いにそのまま流されてみたんです(笑)。“Galerie Supermarkt” はドイツ語で、そのままスーパーマーケットを指す言葉です。カクが「ズーパーマルクト」という音が好きだということもあるのですが、カジュアルな名前を使うことで、アートをもっと様々な層にアプローチすることを活動のコンセプトの一つとして据えています。僕たちがやりたいことはコマーシャルギャラリーのプレゼンテーションとは少し異なり、例えばファッション業界の方とコラボしたり、次の11月には京都の築100年を超える蔵を改築したスペースで展示をしたりと、その場所が持つ空気を汲んで、ホワイトキューブではできない作品の見せ方ができたら面白いなと思っています。

ー入木さんはどのような立ち回りをされているのでしょうか?

僕はディレクターとして、作家に実際に会いに行き、趣旨の説明やプレゼンテーション、海外から作品を持ってくる際の手続きをしたり契約書を作ったりと実務的なことまでやります。前職でやっていたことの延長線上ではありますが、今は自分が表に立って交渉することができるので、裁量権があって楽しいです。

アートにはプライマリーマーケットとセカンダリーマーケットがあり、プライマリーマーケットとは、今回の展示で僕らがやってるように作家から直接作品を貰って展示することを指します。セカンダリーマーケットは、いわゆるオークションなどのことですね。代表のカクは元々オークション会社で働いたこともあり、セカンダリーにすごく長けているんです。僕は、アーティストにどっぷり浸かりながら作品をみてしまうことがあるのですが、彼はマーケットとの兼ね合いなども意識しながら、常に冷静な視点を持って作品をみているので、そういう点を尊敬しています。一緒に仕事をしているけれど、僕はプライマリー寄りで海外のスタジオに飛んで交渉し、アーティストと一緒に展示を作っていき、彼はマーケットを意識しつつバランスをとりながらダイレクトにコレクターと繋がっていく、ということをそれぞれしています。

Talking

自分の頭と感性を使って主体的に作品に対峙することの面白さ

作品は、「読み解く」よりも「感じにいく」方が面白いと思います。美術史などの知識から作品の理屈を理解するというよりも、「これは一体何なのか」ということを自分のこれまでの経験と感性をもって能動的に解釈していくということが、とても豊かな経験だと思っています。何か答えの出ないものを突きつけられた時に、すぐにプロセスしきれないからこそ、余韻のようなものがその人の中に残るのかなと思いますが、その「解らないこと」を毛嫌いせずに、面白がるくらいの気概で作品に向き合ってみると、知らないうちに自分の中に新たな視点が生まれるのではないかと思ってます。

現代アートは個性が強い作品も多いですし、最初は少し難しいと思うのですが、自分から感じて考えない限り、それはずっと意味がわからないもののままになってしまいます。現代アートが私たちに新しい解釈を与えてくれる面白さはそこにあって、展示を見にきてくださる方には「ぼーっと作品に向き合ってみる楽しさ」というものを感じて欲しいなと思っています。

どのような人に展示を見に来て欲しいですか?

本展ではアートに普段馴染みのない方にもぜひ来ていただきたいです。僕は、アートにバックグラウンドがない人に対して説明をして、彼らのリアクションを見るということが今すごく新鮮なんです。彼らがどんなふうに作品を見て、何を感じたのか、何を考えたのかを聞くことにとても興味があります。それはやはり、ホワイトキューブを出て自分たちの展示をやるということの新鮮でエキサイティングな側面ですね。

活動の今後の展望などがあれば教えてください

今は場所を持たず活動していますが、将来的には自分たちのスペースを持ちたいなと思っています。キュレーターの方や僕たちが今まで付き合ってきた人たちのスタンダードは意識しつつも、アートのバックグラウンドがない方々にも現代アートにもっと触れて欲しいという想いがあります。日本では、ギャラリーに少し入りにくいイメージがあるように思いますが、欧米に行くと、買い物帰りのおばさんや子連れのお母さん、犬の散歩中のおじさんなんかが普通に現代アートのギャラリーに来ているんです。そんな風に、日本でもアートが生活ともっと身近なものになったら良いなと思っています。それに、現代アートって何だかよく分からないな、何をやってるんだろうというイメージを持って欲しくないですね。それは、僕たちアートのインサイダーの人もみんな思っていることだし、作家自身も思っていることなんじゃないかな。僕たちのこれまでの出会いやバックグラウンドを大切にしつつも、その両方のバランスをとって活動していきたいです。

また、今はアートマーケットが大きくなっていて、「なんかかっこいいじゃん」「なんかイケてるじゃん」というビジュアルの部分だけで作品がインスタントに消費されてしまっている気がしていて、作品の作品たる一番大事な部分が置いてけぼりになっているような感覚があります。時間はかかるかもしれないですが、コツコツと作品の良さを広めていきたいと思っています。


入木龍生 | Ryusei Iriki

Galerie Supermarkt

Galerie Supermarktは、国内外の新進気鋭の現代美術作家の展示・プロモーション活動を行なうために設立された。主に若手作家の展示について、現代美術に限らず様々なコラボレーションを通じて、時代に即した新たな展示のあり方を提案する。

https://www.instagram.com/galerie_supermarkt/

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