INTERVIEW case#11 WE Collaborate Here "たかがコーヒー、されどコーヒー。手は抜いていないです"

Topic: InterviewWritten by Miho Koshiba
2018/11/14
Wataru Kato

今までの人生、自分のやりたいことを一つ一つ歩んできた。コーヒーが好きだったから。あそこで見た靴がかっこよかったから。あのアパレルに入りたかったから。自分の好きという気持ちを源に、悔いのないよう実直に行動に起こしていくこと。結果それが今の「働く」につながっている。


青山の国連大学前でファーマーズマーケットなど数々のイベントを仕掛けるMEDIA SURF COMMUNICATIONS INC. (以下MSC)のプロジェクト、Stockholm Roast TOKYO。そのプロジェクトの一環として、表参道COMMUNE 2nd (※みどり荘表参道も同敷地内にある)の一角にあるTobacco StandにてStockholm Roastのコーヒーを提供する加藤渉さん。日々コーヒーを淹れ、その傍らみどり荘ではStockholm Roast TOKYOのマネージメント作業に勤しむ。プロジェクトに入る前は、ワーキングホリデーでオーストラリアにいたと耳にしたことがあった。なぜ、彼が今こうしてコーヒーを淹れているのか、現在に至るまでのその歴史を紐解いてみた。

2014年、当時30歳の加藤さんは、2年間ワーキングホリデーを通してオーストラリアとニュージーランドでバリスタとして働いていた。帰国後の20168月に東京の蔵前にあるNui. Hostel & Bar Loungeでバリスタとして働くことになる。

2,3ヶ月が経ち、友人からコーヒーをやらないか?という誘いが突如電話ごしに訪れた。それが冒頭でも話した北欧スウェーデンにあるロースターStockholm RoastPOPUPのコーヒー店舗を開くというプロジェクトの話であった。

しかし、Nui. Hostel & Bar Loungeの代表に魅力を感じていた加藤さんは、もっとここで働きたいという気持ちから、最初はプロジェクトの話を断った。

加藤「断りのメールを入れた後すぐに、絶対これは後悔するなと思い始めた。これって言い訳になるなって。あのときやっておけばよかったと思いたくない。今まで後悔したことって一個もなくて。やりたいことは全部つぶしてきた。だから、自分の中で絶対後悔すると思った」

話し合った末、しばらくの間Nui. Hostel & Bar Loungeで働き、20174月よりStockholm Roastのプロジェクトに加わり、期間限定のPOPUPのコーヒー店舗を出すことになった。

加藤「最初はTobacco Stand3ヶ月間POPUPとしてコーヒーを出していた。毎日みどり荘から道具を持って行って、(朝の7時から準備をして)3時間だけやって、また片付けてというのを3ヶ月やった。雨の日も風の日も()。毎日パンも買いに行って。最初の3ヶ月の予定が、もう3ヶ月やろうってなって。結局9ヶ月間ずっと()。最初は別の豆でも出していたんだけど、今年に入ってから、Stockholm Roast1本でやろうってなった。まだプロジェクトが始まって2年も経ってない」

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札幌出身、もともとは地元の服飾専門学校に通っていた加藤さん。2004年、在学中にアルバイトとして働き始めたカフェで、初めてエスプレッソマシーンを触った。それが21歳の頃。

加藤「もともとコーヒーが好きで、一番最初のきっかけは専門学校のときのアルバイト。当時、札幌にはエスプレッソマシーンが置いてあるカフェはあまりなかった。ドリンク担当になって、初めてエスプレッソマシーンを触ったとき、すごい楽しいと思った。けれど、Youtubeもたいして発達していなかったし、何かを学ぶにしても難しかった。もうちょっと勉強したいなって思って、コーヒーを仕入れているコーヒーセミナーに学校をサボって行ったりして()。すごいハマった」


コーヒーの楽しさに目覚めたものの、卒業後はアパレルの道へ。札幌のアパレル店舗にて一年半。東京に上京し、札幌時代から憧れを抱いていた表参道の靴のインポート屋にて営業の仕事を4年勤め、その後はやはり飲食をやりたいと思い、多くのカフェに履歴書を送るが、全て断られた。長らく未練があった外苑前のアパレルに無事採用され、ブランドの立ち上げ、直営店舗の運営を店長として任せられる。

加藤2年目が終わるくらいが29歳。ふと思い出して、もう30歳だなって思った()。やりたいことやってきたかなと思うとコーヒーをやってないなとか、あと英語もやってないって。ずっと英語は喋りたかった、若い時から。すごい英語をやりたいなっていう気持ちがあったのに、結局やってないじゃんって、これはやらなきゃダメでしょうと。(お店では)いろんなこと全部やってたから、一年かけて、人を育てて、やめる約束をした。」

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3年勤めたアパレルを辞め、当時YESNOしか言えないというほど英語を知らなかった彼は、フィリピン・セブ島にて短期間留学をした。ワーキングホリデーでオーストラリアとニュージーランドにてバリスタとしての日々を過ごした。簡単には通らないレジュメ、通じない英語、孤独な時間。そのような環境の中でも、コーヒーが好きだとういう気持ちを糧に、メルボルンを筆頭に2か国合わせて4つの街のカフェで2年間働いた。

加藤「オーストラリアは、6時にはお店が開いていた。それが文化だった。朝起きることはそんなに苦じゃない。今は6時過ぎに起きるようになったかな」

加藤(海外に行って)自分の中で性格が変わった。こんなに自分のこと喋らなかったし、基本的に人と話さなかった。接客とかはするけど、仲良くなりたいとか友達以外一切なかった。海外生活はずっと孤独だった。弱音をはける友達もいなかったし。同僚には言ってはいたけど、そんな伝わってなかったと思う()

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現在は、Tobacco Standのメニューの監修の他にケータリングも率先して取り組んでいるようだ。

加藤「ケータリングに行くことは、大事にしていることの一つ。Tobacco Standにいたら、もちろん常連さんとか日々来てくれるお客さんと出会う。ただ、それ以上変わることがない。変わるきっかけは、やっぱりいろんな人に出会うこと。それがケータリングだった」

自らの足で外の世界へ踏み出していく。そして、人との出会いから生まれるつながりをコーヒーという一つの飲み物を通して広げていく。

加藤「楽しいことは、コーヒーを淹れているとき。お客さんが毎日来てくれることはすごくうれしい。コーヒーを飲まなくても、挨拶だけでも。朝しかそういう光景はないんじゃないかな、それができる場所。そうできる人がすごく増えた。常連じゃなくてもわざわざ飲みに来てくれる人もできたり。時間をかけてここまであがってきた。スタッフの子達も、コーヒーに対して意識が変わって来て、何かを教えたわけではないけど、何かを感じてくれているのかなと」


加藤「自分が働きたいから働いている。自分が思っていることは全部やりたい。やりたいことをつぶしていく精神でやっているだけ。それぐらいだと思う。だから働いてる。一緒に賛同してくれるスタッフがいるならば、面倒を見ていきたい、食べさせてあげたい。ちゃんと生活をさせてあげられるような」

学生時代に初めてエスプレッソマシーンに触れた時の高揚感、コーヒーが好きだという気持ちが、海外に出てバリスタという仕事につながった。今では一緒に働くスタッフも巻き込んでコーヒー屋を運営している。「そこは全部つながっていて」と語る加藤さん。

加藤「コーヒーをやりたいというのは、一つでしかない。Stockholm Roastの共通認識で、コーヒーってただ一つのツールでしかない。彼らはワインも大好きだし、音楽やアートも好き。どっか行くのも好きだし。その中で、コーヒーっていうのが一個あって、すべての空間を作ったり、全てのイメージを作ったり、一つに過ぎない。一つに過ぎないけど、クオリティは最高ですよ。たかがコーヒーだけど、されどコーヒー。手は抜いていないです。ここだけ見てほしいっていうわけじゃないのが、共通認識。トータルでやっていくことにみんな興味がある。自分もコーヒーをやりたいっていう気持ちはあんまりなくて、コーヒーもある、お酒も、音楽もアートがある空間っていうのを、それが都市なのか田舎なのか、外の屋外なのか、それがどこなのかわからないけど。どこに行ってもよくて。どこかで自分が思うことをできる場所をやってきたい」

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今年の12月からはケータリングを通して知り合った大手町のシェアオフィスのカフェラウンジにてStockholm Roastのカフェ運営が始める。みどり荘に来る頻度は少なくなってしまうそうだが、みどり荘についてどう思うか。


加藤「みんないいですねえ。キャラが強い。これから大手町のシェアオフィス入りますよってなった時に、たぶんこんな濃い人たちはいないと思う()。次の展開で、自分のキャラもちゃんと持っていきたいなと、働くスタッフもそう。その中にみどり荘の人たちも巻き込んでいきたい」


Wataru Kato 

Stockholm Roast

北海道苫小牧市出身。20174月より南青山Tobacco StandにてStockholm Roast Tokyoをスタート。201812月より、大手町ビル6階<Inspired Lab>にてカフェ運営が始まる。


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