COLUMN #73 working bees

Topic: ColumnWritten by sayoko kawai
2023/1/20
working bees

虫が苦手な人はどれぐらいいるだろうか。

私は虫の役割には興味があるが、触るのは躊躇するレベルだ。虫を見ると叫んだり、逃げようとする人の気持ちは理解できる。私の本能は虫そのものを拒否しているが、かろうじて理性でその本能を説き伏せている。

そんな葛藤もある中で、MIDORI.so Bakuroyokoyamaの屋上でミツバチを飼うことになった。飼うといっても、蜂蜜をとることが主な目的ではなく、人間以外の他の生き物と共存することへの実験という意味合いが強いプロジェクトである。(もちろん、蜂蜜が採れたら最高だ)

そこでミツバチの生態系や文化のことを理解するために、都市型養蜂のアドバイザーとしてBeeslowの船山さんに参加してもらえることになった。船山さん曰く、ミツバチのコロニーは、1匹の女王蜂と、働き蜂、そして1割ほどのオス蜂で成り立つとのこと。実は「働き蜂」と呼ばれる蜂はすべてメスだったのである。オス蜂は食事もすべて働き蜂(メス)に頼り、自分では餌をとることもしない。ジェンダーレスと言われるこの時代に、なんという不平等さだろう。オスの役割は一つ、子孫繁栄という使命のもと、ただ女王蜂と交尾をするためだけに生まれてきている。働き蜂から日々餌をもらい、そして、一度の交尾でそのまま爆死する。それはそれで儚い生き方なのだ。

一方女王蜂は産卵期になると11000個以上卵を産む。しかもオスとメスを生み分けることができる。交尾の際に命がけのオスから引き継いだ精嚢から受精した卵からはメスが生まれ、未受精卵からだとオスがうまれるという仕組みである。つまりオスがいなければメスは生まれず、メスが生まれなければ働き蜂はいない状態になり、それはコロニーの死を意味するのである。「働く蜂」も「働かない蜂」も、蜂の社会構造の中では不可欠なものである。彼らは役割を全うし社会のピースをなんらかの形で埋めているのだ。生物同士がお互いを支え合っている自然界の構造の精巧さに驚いた。

ミツバチは、生活の邪魔をしなければ刺さないそうだ。今日もひたむきに生きているミツバチたちとの共存を、メンバーがおもしろいと思ってくれたらうれしい。

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