COLUMN #57 personality

Topic: ColumnWritten by Saburo Tanaka
2022/9/16
personality

「漫才はニンである」

お笑いを志したことがある者なら1度は耳にしたことがあるだろう。ニンとは元々は歌舞伎用語(仁)から派生したらしく、お笑いの文脈では各々が持っている個性や特徴、人間性のようなことを意味する。元気な人間は元気なことを、ネガティブな人間はネガティブなことを、スーパーアホな人間はスーパーアホなことをネタにすると漫才にニンが出て説得力が増す。お客にこの芸人は本当にこういう人なんだろうなとか、こういうこと言いそうだなと思わせられたら勝ちだ。一流の漫才師を思い浮かべるとわかりやすい。おそらく普段からブラックマヨネーズの吉田さんは細かいことを気にするだろうし、かまいたちの山内さんは理屈を捏ねるだろうし、銀シャリの橋本さんは1ターンで4回突っ込むだろう(知らんけど)。ニンがある漫才はその芸人(コンビ)特有のその芸人にしかできない笑いを生む。その芸人がやるからおもしろい、というような。自分のニンと向き合い、ネタに昇華させることに頭を悩ませることが漫才師の仕事の大部分と言っていいのかもしれない。

前にここのコラムで書いたように僕はMIDORI.soに来る以前漫才師の端くれを7年半ほどやっていた。よさそうな設定を考えたり、大喜利をしたりすることにはそこそこ自信があり、実際にネタやボケの中身自体を褒めてもらうことも少なからずあった。しかし、僕の漫才にはニンがなかった。漫才に血が通っていなかったのだ。ニンのなさを指摘されたことはネタの中身自体を褒めてもらったことの7倍くらいあった。試行錯誤してみたが、出来合いのテンションや小手先の技術を用いることに終始することが多く、たいした成果は得られなかった。僕は芸人として自分のニンを出すことを最後まで掴めなかった。

1ミリも売れないままコンビを解散し舞台から遠ざかり、漫才をやっていた時とは違う角度から自分を探す中で縁あってMIDORI.soに来て早1年半。自分以外のコミュニティオーガナイザーを思い浮かべながらコミュニティオーガナイザーとは何かを考えた。MIDORI.soをよりよくにするため、皆が経験や知識やスキルを持ち寄っているのはもちろんなのだが、何よりも各々が自らと向き合い、各々の方法で心を表しながら決して完璧ではない人間性(誰が言うとんねん)を以てメンバーと、他のコミュニティオーガナイザーと接し、MIDORI.soを見つめている。英語が話せたり、Macカタカタできたり、論理的に考えられたりすることよりも、それぞれ特有のそれぞれにしかない人間臭さの方が、場所にコミュニティにMIDORI.soに何倍も激しく血を通わせているように思う。

「コミュニティオーガナイザーもまたニンである」のかもしれない。僕はここでもまたニンを出すことを模索している。

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