COLUMN #44 upcycle!

「日本のアパレル業界における需給バランスについて; 1990年衣服は12億点供給され、その消費率は95%。つまり、ほとんどが消費されてました。一方2018年のデータでは供給量が29億点と1990年の2倍になりましたが、消費量はほぼ変わらず、消費率は46%まで下がりました。つまり、半分以上作ったものがお客さんの手に渡っていないという状況です。」
これは、5月28日にMIDORI.so Bakuroyokoyamaで開催したアップサイクルをテーマにしたイベント「We Market (& Think) HERE」の出展者の1人、京都THE TINY SHOP by MORIの井垣さんが見せてくれたデータだ。これには衝撃を受けた。井垣さん自身もこのデータを見て、古着屋としてだけでなくアップサイクルのブランドも作りも始めるようになったそうだ。
ここMIDORI.soでも拠点の1つである馬喰横山がオープンした場所が問屋街ということもあり、アップサイクルブランドSIGHT SITE STUDIOを始動している。「We Market HERE」はそのブランドのお披露目も兼ねていた。SIGHT SITE STUDIOは、これまでの「何を作る」から、今あるものを使用して「どう作る」という生産方法にシフトしていくための実験場でもある。馬喰横山の1階のスタジオで試行錯誤をしながら夜な夜な作業している仲間達の姿を見ていた。私も少しだけ手伝ってみたが1着の服を作るのにこれほど手間暇がかかるとは思いもしなかった。1つの服にはいくつものパーツがあり、綿密に着心地やデザインを追求して出来ていることに感動もした。だからこそ誰かが腕を通す前に半分以上は廃棄されているという事実に対して、環境負荷ということだけでなく、作り手の労力を思うとさらに胸が痛んだ。
井垣さんはこんなことも言っていた。「アップサイクルをするために、リデザインしたとしてもそれを着てもらえなければ廃棄量は変わらない」単純にアップサイクルの要素を入れればいいということではなく、原点はクールなものづくりということだ。そもそも需要と供給のバランスが崩れたアパレル業界で、新たに服をつくることは必要なのか?という私たちの問いに対しても、「それでも、ファッションのもつ力に支えられて今の自分がある」と。ファッションは産業であり、日常生活であり、自己表現の場でもあるということだ。
今日何を身に付けるのか。なにげなく毎日決めていることだが、せっかく選ぶのだから信念をもった人たちの作ったものを身に付けていたい。
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