COLUMN #199 多様多元的な社会の中で

家から特急わかしおに乗り、蘇我駅で総武線に乗り換えて津田沼駅に着く。小学校6年生の時、毎週日曜日に日能研津田沼校に一人で田舎からせっせと通っていた。特急わかしおは1時間に1本あるかないかだったので、塾の終了時間から電車に乗るまでちょっと時間つぶしをする場合があった。
津田沼パルコ(2023年閉店)は時間つぶしに最高の場所だった。田舎の小学校6年生にとってはなにもかもが輝いて見えた。1Fにはまだ始まって10年に満たない無印良品があった。シンプルな色の入れ物にカラフルなペンをはじめとした文房具。とにかくワクワクしながらウロウロした。時は変わって、渋谷。渋谷パルコの地下の本屋は他の本屋とは違った。そうだ名前はパルコブックセンターと洋書ロゴス。今振り返ると、単なる「買い物の場所」を超え「カルチャーを生み出し、広げる場所」としての役割を果たしてきたのだと思う。
そんな私の中で輝いていたパルコから、シェアオフィスを手伝ってもらえませんか?と話が来た。とうとうそんなところから見られるようになったのか!とちょっとほくそ笑んだ。
あのカルチャー全開のパルコがシェアオフィス?百貨店やファッションビル全盛期の時代からの翳りもあいまって、これからのパルコのあり方を模索している時期だったのだろうなと思う。
さまざま議論して、買いに行くという消費行動を促す場所という位置付けにワークスペースが入ることで、生産しにいくという反対の行動をおこすことができる場所になるのではないか。そんなチャレンジをしてみようということになった。
好きをしっかり持っているであろうパルコ層向けに2020年「好きと好きの間」= SkiiMaが心斎橋パルコと吉祥寺パルコでスタートした。(ネーミングでいうと、北欧ブームもあって「スッキャネン」面白くない?って話もあった汗)それぞれの好きが混ざり合うと面白いことが起こりそうだよね、という話。「カルチャーを生み出し、広げる場所」をさらに加速するイメージ。SNSが加速してメディアが多様化、カルチャーも多様化・多元化していく中、どれだけ場のもつパワーを発揮できるのか、これが大きな課題でもあった。
悔しくもコロナ禍でのオープンとなったが、それでもパルコの中にある働くところってので緩やかにメンバーが集まりSkiiMaが走り出した。走ること5年。そして明々後日から私たちがバトンをもらい、SkiiMa KichijojiをMIDORI.so Kichijojiとして引き継ぐことになった。先の大きな課題はまだ乗り越えたと言い切れないので、まだまだチャレンジは続く。
MIDORI.soも「かっこいい」「面白い」「やべえ」(こう書いてしまうと陳腐だけど)を大事にしている。ルール守ってください!のレイヤーではないところを見据えて動いている(はず。ちなみに、これに関しては『としょかんライオン』って絵本をぜひ読んで欲しい。)社会に表面的な「べき論」が広がり、世の中がどんどん硬直化しているであろう中で、やはりオアシスは必要だ。
カルチャーと暮らしが交差する吉祥寺で、パルコがこれまで育んできたカルチャー創出を発展させ、場が持つパワーを最大限に価値としていきたい。
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