COLUMN #157 未来を見るための言語

先日、映画『メッセージ』(原題:ARRIVAL)を鑑賞した。この映画では、使う言語が私たちの思考や世界観をどのように形作るかが描かれている。通常、私たちは世界を物理法則によって動くものとして理解している。例えば、ボールを投げれば必ず弧を描いて落ちる。このように、同じ条件であれば同じ結果が得られるという再現性が、私たちの日常生活や判断の基盤を形成しているのだ。
こうした予測可能性を前提とした世界観は、特に現代のビジネスシーンで『仮説』や『再現性』といった概念として強調されるようになっている。ビジネスではまず仮説を立て、その仮説に基づいた手法を実行し、再現性のある成果を追求するプロセスが一般的だ。しかし、これまでのように仮説から再現性の高い手法を確立することが、唯一の成功モデルである時代は終わりに近づいていると感じる。変化の激しい現代では、再現性に頼るのではなく、柔軟な仮説の立案と迅速な適応が求められている。
映画で描かれる非線形的な視点は、こうしたビジネスの変化にも通じるものがある。非線形的な言語を使うことで、未来の出来事を見通す力を得た主人公のように、私たちも既存の枠組みに囚われない視点を持つことが重要だ。
私たちは何を世界と捉え、その中で何をしていくのか。異なる視点や新たな言語で未知の可能性を見ることができれば、どのような未来を描けるのか。その問いこそが新たな可能性を開くカギとなるだろう。言語や視点が作り出す固定的な見え方にとどまらず、未来を自由に行き来できる思考法を手に入れることができたら、全体を俯瞰し、私たちの認識の幅を広げることができるはずだ。映画のように、曖昧さの中に身を置くことで、固定的な枠を超え、新たな理解や未来の可能性を見出せるのではないだろうか。
言葉が隠しているもう一つの側面 —つまり、私たちが普段見過ごしている潜在的な意味や新たな価値— を見つけ出し、それを照らし出すこと。それが、私たちが本当に求める在り方を見つけるための道を切り開く一歩になるのではないだろうか。そして、あなたにとって、その在り方は、どんな価値観や選択が関わるものだろうか?どんな日常や関係性の中にその在り方を見つけられるだろうか?
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