COLUMN #8 rules ?

Topic: ColumnWritten by Mizuki Kanamura
2021/9/20
#8 rules ?

京都から東京に帰ってくる新幹線で、「黄色いパスケースの落とし物がございました」というアナウンスが流れた。話し方が元々録音されていたのかというくらい型に沿った車掌の話し方だったから、てっきり駅に着くアナウンスか何かかと思った。日本人なら誰でもイメージ出来るであろうあの車掌さんの話し方が一体どのような経緯で生まれたのか謎だが、考えてみればラジオが生まれた時代は世界中どこでも型のある話し方で物事を伝えていた。日本では今でも綺麗な話し方という型を色んな人が色んな場面で守り続けている。

それに対して今のロンドンの地下鉄の車掌さんたちの話し方は何ともユニークである。朝から陽気に"Have a nice day everyone!"という人や、さりげなくジョークをかます人、満員電車でもみんながドッと笑う瞬間があったり、人間味を感じることが多い。各駅の改札口に置かれているホワイトボードには、駅員の性格が滲み出るようなクオートやメッセージが書き出されていたりする。忙しく働く人たちを元気付けようと気を利かせているだけでなく、彼ら自身も楽しんでいること、自分の仕事に誇りを持っていることが伝わってくる。

ロンドンの車掌さんたちにも、伝えなければいけない事や、やらないといけない事は一応ある。型があるからこそ社会は回っている。彼らの共通点は、他人の目や昔からある型を気にせずに、自分のためにも、周りのためにも正しいと思うことを出来る勇気がある事だと思う。自分の頭で考えてこうした方がいいかも、と思ったことをやろうとしたら、既にある型から少しはみ出してみないと出来ないことがあったりする。それは型を拡張すること、作り替えることとも言えるかもしれない。

自分を守るために、傷つかないために型にはまり続けることは、頭を使わなくて良いからとても楽で簡単で安全だ。それはほとんどロボットになることと変わらない。しかし人間として、ロボット(になってしまった人間)とコミュニケーションをとることはとても難しく、冷たく、虚しいことである。人間らしさを殺すのは新しいIT技術の発展ではなく、思考停止させる古い型たちとそれに従う私たち自身なのでは無いか?

人間が人間らしく生き働くために、今日も疑おう。話そう。楽しもう。
私たちはみんな一緒に生きている。

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