就職(してもしなくてもいい) 相談会 トークセッションレポート第3 「組織の未来」会社をはじめとした組織はどうなっていくのか

Topic: Workshop
2025/11/25
就職だけでなく、働くことを考える。

20231028日、MIDORI.so SHIBUYAにて開催した『就職(してもしなくてもいい)相談会2023』。本イベントは、具体的な会社や職業を探すことを目的とした就職活動のための相談会ではなく、参加型トークセッションやマーケット、相談会など、参加者が自由に意見を交換する場を作り、就職する前にまずはこれから自分がどう生きたいか・働きたいかを考え、より良い社会をつくる仕事や人と出会えるような機会を通して「働く」に対する視野を広げてもらうことを目的とした。

本レポートでは、第3部「『組織の未来』会社をはじめとした組織はどうなっていくのか」で語られた内容を紹介。ゲストスピーカーは、株式会社ガイアックス 代表執行役社長の上田祐司さん、株式会社MIMIGURI 執行役員CCOの小澤美里さん、株式会社CINRA 代表取締役 / 株式会社Inspire High 代表取締役の杉浦太一さんの3名。MCMIDORI.soコミュニティオーガナイザーの石橋萌。


Writing : Tamao Yamada
Photo : Popi Takahiro Yanakawa
Edit : Miho Koshiba

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上田祐司さん(株式会社ガイアックス 代表執行役社長)

働くとは「自分の人生で何をするか」

同志社大学経済学部卒業後、起業を志し、ベンチャー支援を事業内容とする会社に入社一年半後に退社、24歳で株式会社ガイアックスを設立→30歳で株式公開「人と人をつなげる」のミッションの実現のため、ソーシャルメディア事業・シェアリングエコノミー事業・web3/DAO関連の事業を行っている

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小澤美里さん(株式会社MIMIGURI 執行役員CCO ※イベント当時)

働くとは「自分を知る鏡、まだ見ぬ世界へと繋いでくれる接点」

京都工芸繊維大学工芸学部、グロービス経営大学院経営研究科卒。グラフィックデザイナー、webデザイナー、ディレクターを経てブランディング、デザインを主とし起業(共同経営)。その後webサイト制作・システム開発会社にて執行役員・COO/CDOを務め、デザインプロセスを用いて経営課題の解決に取り組む。20228月株式会社MIMIGURIに入社。20229月に執行役員CCOChief Cultivating Officer)に就任。

03

杉浦太一さん(CINRA, Inc. 代表取締役 / Inspire High, Inc. 代表取締役)

働くとは「自分を知り、励まし、成長させ、生かしてくれる時間」

高校大学で芸術文化にどっぷりつかるアーティスト活動を断念し新たな文化をつくるべく「CINRA」を学生団体として立ち上げる大学卒業と同時にCINRAをそのまま株式会社化「人に変化を、世界に想像力を。」をミッションに、自社メディアの事業運営や、官公庁や地方自治体、大手企業のブランディングやマーケティングに従事→2020年、教育事業『Inspire High』を立ち上げて分社化。Forbes JAPANNEXT100 世界を救う希望100人』選出。第8期東京都文化政策部会専門委員。

新しい組織のカタチ

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組織の未来を考える上で、最初に伺ったのはゲストスピーカーそれぞれが経営する組織の形について。社内起業、相互ファシリテーション組織、フリー出社制度…etcと、様々な特徴を持つ組織の在り方とそこに至るまでの経緯や想いを語ってくれた。

上田祐司(以下、上田):ガイアックスは、主にソーシャルメディア事業とシェアリングエコノミー事業を展開しているのですが、社内起業やカーブアウトを認めているので、それよって色々な事業が生まれています。ストックオプションや外部からの資金調達も含め、新規に発行する株の50%の所有を認めていて、本業でもカーブアウトして株を持たせる方針を採ることで、社員は独立心を持ちながらも、会社全体の利益にも貢献できる仕組みになっています。

小澤美里(以下、小澤):MIMIGURIは、一言でいうと「ファリシテーション型組織」です。事業としては「創造性の土壌を耕す」というミッションの元、ー組織に向けたコンサルティングや、そのためのプロダクト開発を行っていますが、私はそれを社内でやっているような感じ。一般的な企業は、事業戦略があって、働く人たちがその実装を担うという考え方だと思うのですが、MIMIGURIの場合はそこの道具的な関係性はやめましょうっていう考え方です。具体的には、個人が「こうやって生きていきたい」ということと、会社の中で価値を出していくことの足並みを揃えるための対話の場をファシリテーターのような形で行っていて、組織開発においても様々な施策を実施しています。

杉浦太一(以下、杉浦):CINRAの組織の特徴としては、社員の自主性を重んじる働き方かなと思います。弊社はコロナが始まる前からフリー出社制度を設けていて、自分で働く時間をマネージしてもらっているのと、同業種の副業も認めています。それは、副業で培った経験が本業にも役に立つと考えているからです。チームとしては「ミッションドリブンカンパニー」を目指していて、6年前からミッションを一新し、「人に変化を、世界に想像力を。」という理念を中心に据えてきました。色々進めていく中で、自分たちも色々な気づきを得ながら組織として変化してきた感じですね。


どうやって組織をカルティベイトする?

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トークは、組織の在り方から会社のミッションがどのように組織に浸透していくのかについて移る。組織が成長するために、会社と個人がどのような関係性を築く必要があるのか、そのために何を行っているのかについて話が展開された。

杉浦:当然、経営者として売り上げや数字の話もするので、それがミッションとの二元論になっていくと、ミッションの方がおざなりになってしまうことがあるので、経営の立場にいる人がいかに、ミッションを据えてメンバーとコミュニケーションできるかみたいなところは意識しています。会社のミッションは、合い言葉的なものとして、日常に出てくれば出るほど文化になっていくだろうと思っているので、社内会議や日常を通して、自分が具体的な言葉や行動で示していく必要があると思っています。

上田:過去に、マックスむらい氏の会社・AppBankが上場までたどり着いたのですが、なんていうかそういうところまでやるぞっていう感覚をチームで持ってくれるかどうかが結構重要で、個々人の熱意ややる気に委ねているところがあります。ただ、ソーシャルメディアとシェアリングエコノミーに関係しているものだったら、会社と一緒にある種チームとして攻めようぜっていう感覚はありますね。

小澤:MIMIGURIでは、自己実現を支えるための仕組みを作ろうとしています。自己実現は、個人がやりたいと思っていることと、社会に求められることが整合している状態を指しますが、それってなかなか難しいですよね。自己実現とは、単に目標を掲げるだけでなく、今の具体的なスキルや会社内での機会を踏まえてプロジェクトに取り組むことと、自分の理想と実務の成果を照らし合わせて、リフレクションを繰り返すことが重要だと思うんです。会社の仕組みとして、半年ごとにリフレクションを行い、お互いに支援し合う環境を作り上げようとしています。このプロセスは人事評価とは別なので、個々の目標と会社のミッションが一致しているかを確認しながら進めています。

杉浦:CINRAは、会社の方向性に共感して入ってくださる場合も多く、自己実現したいことが、結果会社を前進させるケースがあるので、比較的やりたいことを会社でできるということが多いかもしれないです。それでも、自己実現の実現性と経済的な意味での合理性を考えると、個人のWILLだけではどうにもならない場合もあるので、現場で経験を積んでから次のチャレンジをしてもらったりすることも多々あります。

個人と組織がお互いに材料となるようなフェアさが作られるといい

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上田:最近は「やりたいことしかやらねえ」みたいな、自分の力量が分かってないけど展望のある若者って増えてきている気がするんですけど、僕はできるだけそういう舐めたことを言ったほうがいいと思っているんです。例えば息子が10人いたとして、10人が現実的なことを言うよりも、「総理大臣になる」とか「野球選手になる」とか、得てして22歳頃ってそんな時期だと思いますけど、そういう気持ちを大切にすることって重要だと思います。

小澤:それでいうと私も26歳で起業しましたし、舐めた若者でしたね(笑)。

杉浦:僕もCINRAを立ち上げたのは20歳の時で、「新しい文化を作るぞ」と意気込んでいました。でも、あの時みんなを集めて、文化で経済活動するチャレンジをやってこようとしたことが今も続いていて、その想いが求心力となって人が集まっているのかなと思います。

杉浦:Inspire Highで日々全国の中高生と話すのですが、彼ら彼女らから「今の大人は良いよね」というようなメッセージを受け取るんです。というのも、今の10代は、会社に入って言われたことをやればある程度幸せに過ごせてこられた時代感の中で大人になった僕らに対して、「WILLがないと生き抜けない」と教育の現場でも言われていて、それは結構しんどいことだよなって。だってそれって社会に出てから気付くもので、もしかしたらそんなものはなかったというパターンも全然あり得るわけです。「幸せ」を中心に置いた時に、組織と人がシーソーゲームになるよりは、対等であるように設計できないかということを日々考えています。

小澤:自己実現と言っても、「最初からこうなりたい」という思いがある人ばかりではないと思うんですよね。実際に仕事をしていく中で、「自分にとってどんな意味があったのかな」「周りに対してどういう影響を与えられたのかな」という振り返りを何度もしていくことで、輪郭がはっきりしてくるということはあると思うんです。そういう為に会社使っていいんじゃないかなという感覚はありますね。

杉浦:どちらかではなく、お互いが材料になっていくようなフェアさみたいなのはあるといいなと思いますね。それこそガイアックスのように、自分で事業をやってキャピタルゲインを親(会社)に戻すだけの気概があるかっていうのは、厳しいかもしれないけど対等なコミュニケーションの究極形ですよね。

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今回のトークでは、どの組織も社員個々の意欲や目標を大切にしながら、それを組織の成長に結びつけるための独自のアプローチを採っていることが伺えた。経営者としての思いと、社員の自己実現をどのように支援し、組織としての目標にどうつなげるかという課題に、各々が真摯に向き合っている姿勢が印象的。組織と個人が共に成長し、相互に支え合う関係を築くことは、これからの働き方においてますます重要になってくるだろう。


就職(してもしなくてもいい)相談会 EVENT

就職だけでなく、働くを考える。

今から社会に出ようとする学生たちにとって、「会社に入る」以外の選択肢に触れられる機会が限られているため、多くの人は、社会人=会社人になることになります。就職サイトや会社説明会では、会社の中にいる人の声しか聞くことができないという実情もあります。限られた情報を基に就職活動をして、希望の会社に入れたのはよいけれど、会社に対する不平や不満がすぐに湧いてきたり、こんなはずじゃなかったと悩んだり、あるいは会社に酷使されて身体を壊してしまう人もいます。その原因は採用した会社だけにあるのではなく「働くとは何か」をよく考えずに就職するしかなかった学生自身、あるいは、そのような「働く」の多様性や選択肢を提示できなかった社会にもあるのではないでしょうか。

本当の「仕事」は求人票や就活サイトの中だけにあるものではありません。これから就職活動をする学生や今の仕事に悩んでいる人たちに、「就職」の前に「働く」ことをまず考えてもらうこと。それが本人にとっても、会社にとっても、社会にとっても、重要なのだと考えています。

就職だけでなく、働くことを考える。それが『就職(してもしなくてもいい)相談会』です。

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