COLUMN #10 workaholic

Topic: ColumnWritten by Seira Nakanishi
2021/10/4
#10 workaholic

コミュニケションを取るのに、必ずしも言葉は必要ではない。必要なのは、想像力と表現力。その表現の一つの手段として、言葉が出てくる。また、想像力のある表現があっても、意思と信頼が固くないと崩れてしまうこともある。ここで、「私」と「歯」の話をする。

先日、ついに私にドクターストップがかかってしまったのだ。ビールである。これはなかなかしんどい診断であった。この夏の私と歯のコミュニケーションは、以下のような感じだった。

私:毎晩のビールだけは欠かせん!!(意思)
最近歯がしみるけど、今まで大丈夫やってんから。様子みよ。(歯への信頼)

歯:やめてほしい物があるねん!!(意思)
自分の体を蝕ませれば痛みも出るし、さすがに治療に行くよね。(私への信頼)

ここで気付きたいのが、「私」と「歯」の間に意思と信頼はあれど、両者のコミュニケーションに求めるゴールにはギャップがあるということだ。このギャップが埋まらない限り平行線で我々の攻防は止まらない。だが、その点で役立つのが想像力である。想像力とは、この攻防で感じ取ったことを自分の中で立体的にし、それを元にまたコミュニケーションという名の表現に起こすまでを言う。もちろん自分の中での想像による創造なので正解はないのだが、この想像、つまり、相手を想い、表現することこそが思いやりというものなのだ。

「私」と「歯」には、意思と信頼はあれど、「想像力」がなかった。そのような両者のギャップを埋められないまま、歯医者に行った後の当然とも言える苦しい結果であった。だが、歯医者がどのような決断を下そうと知らんこっちゃである。なぜなら私と歯医者の間に「信頼」は皆無だったからだ。どんな治療をされたかは略するが、それはそれは、悲しいものであった。

と言うことで、コミュニケーションをとるのに、言葉は必ずしも必要ではない。大切なのは相手を思いやる想像力と、意思と信頼あっての表現をすることである。現に私は、ビールを飲む前に生野菜を食べ、後には口をゆすぎ白湯を飲むことを習慣にしている。歯を思いやりながらも、自分の欲望は満たしている。今のところ、私と歯のご機嫌は上々だ。

ビールを飲む理由には、大好きだということ以外にもうひとつある。私はMIDORI.soでビールを作っているのだ。MIDORI.soでのビールの役割は、「今日も頑張った!」の一杯。「まだ終わってないけど、リフレッシュしたいなあ」の一杯。「誰か飲んでるから、飲んじゃうかー」の一杯。様々だ。どうせなら、スペシャルな一杯にしたいじゃない。MIDORI.soで働く者たちをたくさん見てきて、私はどうしたらメンバーに対してもう一歩踏み込んだコミュニケーションが取れるのか?考えた先には理性をぶっ飛ばして、一度腹を割って話せばいいんだ!と言う答えがあった。理性を飛ばすと言うのは、自分の居方を確立させてくれるという大きな役割がある。

理性という名の仮面が外れればたちまち、身体を駆け巡っていた想いが顔や四肢の表情を借りて前に繰り出す。そこには自由で確固とした「意思」がある。メンバーには少なくとも働く場を共にしている「信頼」感がある。そこに彼らへの想像力を加えた表現が加わった時、ぐっとくる会話のコラボレーションが生まれる。それは、インスピレーションがあったり、深呼吸できるようなリラックスをもたらしたり。受け取り方ももちろん様々。理性をぶっ飛ばすには、とりあえずビールっしょ!ということで、美味しいビールを飲んではメンバーとの会話を想像して研究は続くし、歯とのコミュニケーション、自分の気持ちを大切にしつつ、次は違う歯医者さんに行こう、と今日も思うのだ。

MIDORI.so Newsletter: