COLUMN #21 merry christmas!

「決戦はクリスマス」そう銘打たれたM-1グランプリが行われたのは2005年12月25日のことだ。歴代最高と評されることも少なくない漫才をブラックマヨネーズが披露し優勝を飾ったこの大会の衝撃を今でも覚えている。
この年に5年目を迎えたM-1は既に年末の風物詩となりつつあった。多感な学生時代の多感な12月をM-1と共に過ごし、おもしろいということがイケメン、俊足と肩を並べるステイタスである関西で育ち、イケメンと俊足をどちらも持ち合わせていなかった僕がお笑いに魅せられたのは当然であったように思う。好きな芸人が出演しているネタ番組を録画、分析し自らネタを作り、学校で披露した。授業中の先生からの問題は全て大喜利と化し、所属していた野球部でショートを守るときには相手チームのセカンドランナーを笑かすことに命をかけていた。おもしろくなるためにはどうしたらいいかを常に考え、おもしろい事だけが正義だと信じていた。思想が強くなり過ぎ、トークが下手な父親を軽蔑したことさえあった(優しくてムキムキのおとんやのに)。
高校卒業後、空白3年大学生活3年という独特の寄り道こそしたが、当たり前のようにお笑いを志し、プロダクションに所属した。お笑いに魅せられて以降、僕にとってクリスマスシーズンはM-1のシーズンでしかなかった。2018年までは。
2019年の秋、僕はコンビを解散、事務所を退所し、舞台から遠ざかった。残念ながら1ミリたりとも売れることができず、コンビを組んで以降エントリーしていたM-1でも芳しい結果を出せなかった。
2019年の年末、僕は10数年振りにサンタクロースと山下達郎とローストチキンなプレーンクリスマスを過ごした(M-1自体はイチお笑いファンとして視聴したが)。現在もイケメンでも俊足でもない僕にとってクリスマスは依然キラキラしたものではないが、確実にその意味合いは変わってきている。
「自分の思い描く青写真と違うようになっていたい。」大切にしている羽生善治の言葉だ(将棋は挟み将棋のルールくらいしか知らないが)。稀代の天才の言葉を僕のような愚鈍な人間が引用するのは恐れ多いが、言うまでもなく僕の人生はここまで1ミリも青写真通りにはなっていない。独特な寄り道に、元お笑いコンビという経歴、さらにはおもしろコワーキングスペースのコミュニティオーガナイザーという、祖父母に仕事内容を説明するとしたら理解される前に寿命がきてしまいそうなほどよくわからない仕事に就けるという幸運も重なった。僕の人生は34歳にしてもはや青写真すら描けないほど予測不能なものになっている。1年後、いや半年後すらどうなっているかわからない人生を生きられるのは本当にラッキーだ。おもしろ漫才師決定戦M-1グランプリの決勝進出という目標は叶わなかったが、おもしろ人生師決定戦J-1グランプリの決勝には是非行きたいと思う。そのときは2本目の人生が弱くならないようにしないと。
来年のクリスマスはどう過ごしているのだろう。錦鯉さん優勝おめでとうございます。メリークリスマス
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